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黒い兎の冒険譚 勇者の存在しない…この世界で…  作者: 黒うさモフル
第五章 勇者の存在しない…この世界で…
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失ったもの

頬に落ちる大粒の涙で目が覚めた…


意識の混濁…曖昧な記憶…


破壊の魔獣の心臓に呪いの短剣を突き立てた所までは辛うじて(かろじて)覚えている…


その後は夢の中にいるような感覚だった…



今、僕は地面でプラムの膝枕を受けている…


心配そうな顔の皆が僕を見つめている…


みんなも大丈夫だったんだ、師匠、モルちゃん、ユアンナちゃん…


そうか…プラムの涙なのか…


また、泣かせるような事をしてしまったんだな…


頬から流れ落ちそうな涙を拭いながらプラムに謝る…


「ごめん、泣かないで…」


「黒うさ君っ…黒うさ君っ……うぅ」


「怪我も無いし大丈夫だよ…魔力は尽きてるけど…」


「黒うさ君の、名前が…名前が思い出せない…」















「………」






「えっ……僕は………プラム………師匠………」



「お前の名前の記憶が皆から消えているんだ…推測だが…呪い(カース)制約(ギアス)じゃないかと思う、私も専門外なんで詳しくはわからない…アルカか魔王国の女王、もしくは賢者殿に視てもらう他ない…」



「あっー!腕輪っ!もしかしたら名前刻まれてる!?」


ユアンナちゃんが閃いたように声を上げた。



重たい腕…手首に視線を向ける…



「……ウ…」



腕輪に刻まれたウルマの文字……



「…………ウルマって…………………僕なのか………?」



皆に確認をとると…誰も答えられない…



「確かに…なんか引っ掛かる名前だよね、忘れられた名前…腕輪に刻まれた名前…ふむ…手掛かりか…仮に君の名がウルマだったとしたら、ボクとアンナちゃんはまず違和感を感じないはずだ…」


「でも言い慣れた感じはあるんだよねぇ」


モルちゃんとユアンナちゃんが首を傾げながら応えた。




「皆すまない…」



「謝る事じゃないよ…気にしたって仕方ないし…今は次の事を考えよう」


前向きなユアンナちゃんはいつもどおりだな…


思い出すには何が必要だ…


自分を知っている人間を探す…可能性として駄目だ、師匠や幼馴染みの二人でさえからも消えている…


なら、失った物を探す道具…能力者を見つける…きっとこれが正解ではないかと思う…




重い身体を起こす…


「立てる?黒うさ君…」


プラムが手を取り引っ張り起こすと何とか立ち上がれた…


正直、プラムの黒うさ君に救われる…


「有り難う…」



良く見ると回りは、戦後処理や怪我人の救助で忙しそうだ…怪我人が後を経たない…


そうか、終わったんだ…


喜ばしい事なのに胸が張り裂けそうだ、名前の欠落のせいなのか…喪失感に押し潰されそうだ…


「黒うさ君帰ろうっ!」


皆が手を差し伸べてくれる…

背中を押してくれる…











…………………僕は大丈夫だ…


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