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黒い兎の冒険譚 勇者の存在しない…この世界で…  作者: 黒うさモフル
第四章 決戦
112/117

決戦11別れ



自身の身体が在るのか無いのか分からない間隔…


水面に浮かぶような浮遊感…



見渡す限り映像が流れている…



過去なのか…見たこともないような服装や暮らし、巨大建築物群…


異形な乗り物…


空が光ると栄華を極めた街が一瞬で焦土と化す…







対峙するふたつの軍隊




制圧、虐殺、略奪…



時代が次々代わるが似たような事の繰り返し…




「ぐっ…………うっ……あぁぁぁぁ……」



すべての記憶が頭に流れてくる…



頭が割れる…神経が焼き切れそうだ…



……この世界から存在が消えてしまうぞ…





ふわりと白い両手が腕を伸ばしオニキスを包む…







「大丈夫…私が全てを請け負うから…」


お前の命だけで彼は救えないぞ…


「……足りな分は私という存在を対価に…」


全ての存在からお前の記憶は抜け落ちてしまうぞ…


「はい」


誰もがお前の事を忘れてしまってもか…


「はい」


彼も幾つか失う…残すものは…


「オニキスが失った物を私で補える物があれば…」




景色が高速で流れていくなかで少しずつウルマが透明化していき粒子と化していく…








「あとは任せたよ…」




未来を読み取ってしまった…あの日から…


私なりに抗ってみた…


何度も試してみたが…流石にどうしようもない物はどうしようもない…


モルちゃんなら分かってくれるかな…


彼女ならもっと違うやり方を見出だしたかも知れない…


こんなお別れはアンナちゃんには怒られそうだ…


いやアンナちゃんなら困った顔をしたあと分かってくれそうだ…



プラムちゃん、シャミィさん、シアさん、ハルさんとは…もっとお話したかったかな…



みんなから私は忘れられる…





………………………ありがとう…






(ひかる)、粒子がまるでダイヤモンドダスト現象のようであった。





         ・




白い空間をひたすら落下してゆく…



溢れる涙の大きな雫が宙を昇っていく…



「あれ…涙が止まらない…」

なにかの消失感が胸を込み上げている…



ずっと落ちてゆく…深く暗い奈落の底へ…



「破壊の魔獣と眠りにつくのか…」



思考が停止し眠たくなってゆく…





「………」





誰…





「………うさ…」





………プラム!?






「黒うさ君…………!」




手を伸ばすプラムの手が遠い…




「戻らないと駄目じゃないか、ここは僕と…僕と……………………!?」




「黒うさ君…ひとりで無茶を…………違う…!」



プラムが呼び戻してくれた……



プラムも違和感を感じている…



「戻れなくなる…早く…黒うさ君…」




苦しそうなプラムが手を伸ばす、僅に指が触れると、互いに勢いを付け手を握る…



「駄目だ…君まで帰れなくなる…君は戻るんだっ!」




「戻るわけないじゃ無いですか…」

プラムが魔力を流すと球体の障壁に包まれ二人が落下してゆく…



「戦乙女の力は槍だけじゃないんですよ…守ることもできるのですよ…」





「帰れないかも知れないね…」

僕が苦笑いする…


「それでもいいのです…黒うさ君…ううん…オニキス君」

プラムが微笑んで返す…












「しょうがないふたり何だから…ふたりを元の世界へ…」









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