決戦6
吹き荒れる風…
一瞬で刈り取られる命…
消耗戦の何物でもない、不毛な結論…
クリスタルの角柱に表示される個人名が止む気配を見せない…
戦場に古竜や上位の竜が出現してから更に表示の勢いが増した。
「少し席…外す…」
クリスタルの角柱の表示を管理していたネムがパールに呟く。
死者20,246人………………
他のやり方は無かったのか…?この戦力投入は正解ではない…高位の冒険者や兵士が一瞬で命を落とすんだ…
まだまだ…これからも死者は増えるだろう…
廃墟城の仮設本部施設から一度外に出て空気を吸うと考えながら歩きだす…
各国から次々に増援が到着すると部隊編成され討伐隊に加わっていく、命を掛けて戦場に赴く兵士に自動的に装備される身元確認用の真銀の腕輪…
差し詰、勇者の腕輪といったところか…
中庭に通りかかったとき、ふと足を止めた。
「あっ」
気付いてしまった…
これは口減らしだ…この戦いですら星の延命処置として使わなければならないんだ…
高位の冒険者や兵士、魔術師などは使う魔力は半端じゃない…
戦闘魔術は通常の生活魔術の数百倍になる、威力や規模を拡大するとそれだけ増えるんだったけ…
では、魔女や聖女、賢者、魔剣士は強大な魔力を扱うからどうなんだ?
となるが、門の守護者は異世界から魔力を引いていると賢者が言っていた…
数字を見ていたから気付けた…
でも、あたしが気づいたと言うことは、他にも気付く人間がでてくる…
問題は決着がついた後だっ!
誰かが糾弾されてしまう…
魔女、聖女…魔剣士は人廉の人物だ…
もちろん賢者もだ…
シーサンなら糾弾されても大丈夫か…
それなりの答えは作ってるだろうし。
あたしの思い違いならいいんだけど…
城壁から戦場をみると、黒い煙りを上げて一隻の飛空が高度が落ちて行くのが見えた…
・
「総員衝撃に備えて、何かに捕まっておけよ!」
伝声管から船長の声が響く…
飛空船が黒煙を上げ着陸すると地面を滑り横倒しになる…
ほんとなら、破壊の魔獣の動きを停止さした後に、飛空船で上空から傷口に進入し心臓に呪いの短剣を打ち込む手筈だった。
「シアさん、みんな集めた!」
シャミィがシアに伝えると、そのまま船長に話し出す。
「飛空船を破棄し、船長以下乗組員は本部へ撤退せよ…船長すまなかったな…」
「わかりました、気を付けて行ってきてください…」
船長と乗組員が敬礼をすると撤退準備を開始する。
「らしくなったなシャミィ…!?」
「シアさん!…あれ!?」
破壊の魔獣の体の中からズルズルと音がすると巨大な虫が這い出してくる…
竜の外皮を脱ぎ捨てるように外に出ると複眼が辺りを見回す…
「本体なのか?」
シャミィが考えるように呟く…
「いや本体は竜です、竜こそが破壊の魔獣に代わりない、まだ竜も生きている…」
モルスが眼に魔力を流しながら応える。
「じゃ、あの虫は何、モルちゃん?」
「おそらくウイルス汚染された寄生虫が破壊の魔獣の遺伝子を取り込んだ変異種…」
ユアンナにモルスが返す…
「虫には直ぐに軍が動くだろう、我々は破壊の魔獣の心臓を砕く!」
シアの言う通り既に変異種に対して攻撃が開始されている…
強い風が更に強く吹き荒れる…
あたりから匂う血臭さえも風で消えてしまう…