決戦4
日が上るに連れて天候が悪くなってゆく…
本当なら太陽が頭上にあるはずの時間だ…
湿度の高い風に纏わりつかれ髪を押さえる…
「二人とも大丈夫…なわけないよね、無茶ばかりして…早く中に入って…手当…するから…」
ウルマが甲板からプラムとオニキスを船内に連れ戻すと直ぐに回復魔法を施す…
「私の魔法なんて気休めレベルだけど…無いよりマシだから…あとポーションあるから飲んどいて…」
ほんとにオニキスもプラムちゃんも何回もこんなことして…
覚悟があるのは分かるけど…
「………!?」
飛空船が大きく揺れると、戦闘音が聞こえてくる…
「二人はここ動かないでねっ!」
伝声管から、兵士や船長の指示の声が聴こえてくる…
どうやら、後部甲板に竜が現れたらしい…
「絶対だよっ!」
ウルマが揺れる飛行船内を駆け出してゆく…
・
「こんな時に…!取り付かせるな!」
ハルさんが兵士達の指示を出している。
緑の竜が甲板に取り付こうとするが兵士達が弩や攻撃魔法を放ち応戦しているが…決定的に火力が足りない…兵士達の顔色が優れない…
飛行船単騎で竜と対峙したときは、100%落とされると言っても過言ではない…
「シアさんっ!下にもけっこういる!くそっ」
何回か未来視を発動させたが応えてくれない…
少しでもいいんだ…こんな状況を普通に切り抜けれるか分からないが…
もう一度だけ…これが最後でも構わない…ボクにもう一度だけ…未来を見させて…
目を閉じて願うと、たくさんの映像が頭の中を流れてゆく…駄目だ…選択肢が少ない上に時間もない…
「…!?空間が…?揺らいでいる…?」
甲板の手摺から身をのりだし眼下を見下ろすと、その空間における未来が見える…
墜落していく映像…黒い煙を出して爆散する映像…
不時着している映像…
「ここか…!」
空間の記録を遡ると考えたように船内の操舵室に駆け出してゆく…
出たとこ勝負を物にしないといけない…
途中アンナちゃんに同行を願い、いざというときに動いて貰う…
「船長…お話よろしいですか?」
ある程度の指示を出し終えた船長がモルスに気付くと言葉を返す。
「どうしたのかね?部屋に戻っていたほうが安全だから戻っていなさい…」
「信じて貰えないかも知れません…ボクには、この船が落ちる未来が見えます…いう通り操舵して貰えれば不時着できます…」
「そうなのかね、しかし我々とての簡単には落ちんさ、さあ部屋に戻っておいで君達には君達のやるべき事があるはずだ…」
…くそつ…
アンナちゃん…
モルスがユアンナに合図を送る…
「船長、そこの冒険者の提案を受け入れよ、これは特務命令である!」