鉱山その後
負傷者達が溢れる仮設テントに、里の者達が忙しなく治療に働いている…
治療行為が行える者は数少なく人手の足りない状況に陥っている…
狼人種の隠れ里、鉱山のへの襲撃から二日…
人知を越えた強さ…まるで大人と子供の力の差を見せつけられた…
あの子らの助けがなければ…命を落としていたな…師匠の助けもだ…
隣の簡素な仮設ベッドには、プラムとユアンナが横並びに寝息を立てている。
プラムは生命力を対価にする攻撃を行ったと聞いた…
そうか…あの洞窟の時と同じように…使用しなければいけない状況まで追い込まれていたのか…
ユアンナもオニキスの魔剣の制御を破壊し手に取り応戦したと聞いた…
この子らが奮戦してくたおかげで師匠の戦線復帰に繋がった…
でも…
駄目だった…
すまない…
大粒の涙が溢れだしてくる…
「っさん…」
「シアさん…大丈夫ですか…ちょっと怪我の様子みますね…」
ウルマがハンカチを差し出すと腕の包帯を取り、弱いが癒しの力を行使する…
「ハンカチすまないな…目に…まつ毛が入ってしまって…な…しかし便利な能力だな…幾つぐらい受信記録してるんだ…?」
シアが治療を眺めながら話しかける…
「学園で結構いただきましたよ、適性有るか無いかで、使えないのも有りますけど…モルちゃんの未来視とアルカさんの癒し、シアさんがオニキスに上げた短剣からの氷の魔法…あとほら、覚えてますか?オニキスに血を上げた時あったじゃないですか【譲渡】でしたっけ?あれが意外と面白いんですよ、お腹空いたときに、空腹状態を譲渡すると…」
テントの中に王国の兵士が駆け込んできて、声を上げる…
「シア殿はおられるかっ!」
息を切らしている兵士にシアが応える…
「ここだっ!どうかしたのか?」
テント内の人達が静まりかえると兵士が話しだす…
「まず、新たな門が出現し破壊の魔獣が出現しました…門内での魔獣の討伐は失敗…門の外へ出てきた魔獣と王国、諸国、魔王国が交戦…魔王国艦船と女王陛下の攻撃以外は通らない状況です、聖女殿がシア殿と同行している兎人種達に協力を求めたいとの事です…」
シアがウルマに目を配らせ聞くとウルマが応える…
「シアさんのお師匠様にモルちゃんと一緒に稽古付けてもらってると思いますよ。」
「そうか…急を要しそうだな…」
シアがベッドから起き上がり魔剣を手に取るとテントから出てゆく…
少し離れた雑木林に魔剣を構え合い肩で息をするオニキスとモルス、剣を地面突き立て声を上げる師匠、その横にはシャミィがいた…
「来てたのか…」
「魔剣に魅いられるなっ!魔剣に酔うな!魔剣を持つ者の最低条件だ!お前達は魔剣を持つには、まだ10年早い!」
シアが近寄っていくとシャミィが声をかける
…
「こっちも大変だったようですね…状況は刻々悪くなっていってます…とにかく王国に登録されている貫通持ちや無効持ちをかき集めています、オニキスにも要請が出ています…」
魔剣を幾度となく打ち合わす二人…
まるで終わる事ない剣舞のようであった…