追走
走る馬車の速度が、更に上がった…
おそらく違う魔物が来たんだろう、シアさんから渡された短剣を握りしめ、呼吸を整える、心臓の鼓動がすごく早いのが自分でも分かる……!
あの夜、夜中に目が覚めた私にシアさんは言っていた。
「起こしてしまったようだな、先に言っておくが、お前達と逃走に使った転移魔法のスクロールは短距離転移だ、魔獣との距離はそこまで遠くない、きっとまた襲って来るだろう…」
私は安堵感が吹き飛んだ……!
「大丈夫なんですかっ……!?」
声にならないような声で聞いてしまった……
「なるようにしか、ならないか……
街道にでれば、王国からの救援に合流出来るかもな、森に隠れていても魔獣に気付かれるのは時間の問題だ、街道を目指すのが正しい判断だな」
シアさんは焚き火に枯れ木をくべると私にこう言った…
「魔獣は私が食い止めるさ、だが君達を守る事が出来ない、自分の身と彼は君が守るんだ、だから私は出来る時間の中で君に出来る限りの事をしよう」
そこには、焚き火をはさんだ視線の先に力強い眼差しがあった。
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魔獣の遠吠えが聞こえてくると同時に馬車を追走するように三頭の魔犬を確認できた……!
恐怖と緊張で手が震える……
「私がやらないと……」
短剣に魔力を込める!
「氷の針!」
短剣の先に氷の針が広範囲に展開され一番近くまで来ていた魔犬に命中し速度が僅かに落ちた…!
私は、続けて短剣に魔力を込める!
「氷の針!」
戦闘を走ってい魔犬と、追い付いて来た二番目に数本の、氷の針が刺さる!
目が霞んだ、血液を分け与えた体と魔力が切
れかけた精神が限界を迎え倒れそうになる……
最初の二頭は速度を落としたようだ……
最後の一頭が近づき強く跳躍するのが、わかった…
私は無意識に言葉を紡いだ……
「氷の…………」
短剣は沈黙したままだった………
「氷の刃!」
牙を剥く魔犬の口に氷の刃が深々と刺さっている……
私は背中に、体温を感じた……
そこには私の手を自分の手で覆い魔力を込めた、オニキスがいた………
私は安堵感からか、意識を手放した……