第18話 〜戦闘〜
「皆さん、おはようございます!」
朝ごはんを食べに、1階に降りると皆さんがいた。私は深くお辞儀をし、挨拶をする。
「どうだった、昨日は眠れたか?」
フールさんが気さくに話しかけてくれ、私は笑顔で答える。
「はい! ぐっすり眠れました!」
「それは良かったわね。あんなに食べたから寝る苦しいと思ったわよ」
「私、消化がいい方なので全然大丈夫でした」
「まさか……朝ごはんもあれぐらい食べるわけ?」
「そうですけど?」
「いや、普通ですけどの声色で言ってるけどそれは異常すぎる……」
「ふふふっ。まぁ食べる子は成長するってことよね。ナタリー! ご飯ちょうだい!」
「はいはーい、分かりましたー!」
この宿屋の看板娘のナタリーちゃんがキッチンに行き、山盛りの料理を持ってくる。
「お待たせしましたーー! どうぞお食べ下さいー!」
「ありがとうございます!」
「じゃあ、頂こうか」
◇◇◇◇◇
「わぁーー、いい天気だなーー!」
このエラスラン王国、首都は約200メートルの草原に囲まれている。そのため、人が攻めてきてもいち早く分かる。
そんな国略と裏腹に、このなだらかな草原が私を出迎える。こんな綺麗な草を見た事ないし、この清々しい風を感じたのも初めてだ。
「がはははは! ミルちゃん見てると、こっちまで明るい気分になるなー!」
私の笑顔を見たからか、フールさんはいい顔をして私に話しかけてくれる。
「ちょっとフール。あんたがミルちゃんとかちゃん付けすると気持ち悪いというか……犯罪臭がするんだけど」
「はぁ!? ミルちゃんは俺たちの妹的存在だろ!? ちゃん付けしたっていいじゃねえかよ!」
妹的存在だと言われ、もうこの3人に馴染んでいると私は思い少し嬉しくなる。
「それは無理がある。お前がちゃん付けしたら……ははは、国家転覆罪にかけられるな」
「おいそんな事言うなよ!? 俺の顔がただ怖いだけの話だろ!?」
「それが一番の問題なんだよ」
「ミルちゃんはそんなことは思ってないよな!?」
「いや……ちょっと……結構犯罪臭がするなとは思ってます」
「それは勘弁してくれよーー!」
◇◇◇◇◇
城壁の外に出た私達は昨日の森へ行き、ホワイトベアーの死体を確認する。フールさん達は昨日、私が倒れた事も相まってホワイトベアーの死体をそのままにしてきたらしい。
でも、強力な魔物の死体を敢えてそのまましとくのも冒険者の技らしい。
その理由は、ホワイトベアー程の強力な魔物の肉を食べる魔物は格別な魔物だから、らしい。
ホワイトベアーは一日の殆どを寝て過ごすため、死んでるか死んでいないか一番わからない魔物だ。
ホワイトベアーを食べる魔物はそれが死んでいると理解して食べる魔物か、ホワイトベアーより強い魔物かのどれかだ。
だからこの方法を使い、強い魔物を殺す。それが上級パーティーであるこの3人の作戦らしいが。
「おかしい……ホワイトベアーが食べられてない……」
昨日、私がホワイトベアーを倒した所に行くと。異様な獣臭と、死体の腐敗の臭さに鼻腔が刺激されていく。
ここの近くに寄れば寄るだけ、鼻腔が刺激されもう私の鼻は限界。
吐いてもいいけどそれは私の食物への感謝の気持ちで我慢する。
でも、今はそれ以上に皆さんが頭にはてなマークを付けていることが気になる。
「食べられてない……ってそんなに悪いことなんですか?」
「悪いな……豪快に食べられていたら、一回帰って作戦会議。丸ごと食べられていたら、痕跡を探し奇襲……と俺たちは考えていたが……食べられてないなんてことはこの森ではそもそも有り得ない話なんだ」
あーなんか、私の知識に入ってるぞ。
この森は魔物の質が昔より相当高くなってるせいか、ホワイトベアーを食べる魔物は確実にいるらしい。
それを食べられていたら、痕跡を辿って場所を確認する。
そのせいか———
食べられてない事自体、異常なのだ。
「この状況はおかしい……1回この場からはな————」
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
森の中にこだまする昨日のホワイトベアーと全く同じの鳴き声……しかも、足音からすると1匹……いや5匹ぐらい、いると私は確信する。
「これは……はめられたわね」
木々が倒れる音がし始める。その音は徐々に私たちに近づいてくる。
「まさか……ホワイトベアーがはめてくるとは……はははこれは絶対的絶望」
皆が固唾を飲む中、木々が倒れた砂埃と一緒に突進してくるのは4体のホワイトベアーと白いの毛並みが所々が青い……この場合ブルーベアーと言った方が的確かな。
私の知識に入っている、近年出始めたブラック系やホワイト系の魔物の上位種の魔物。色違いの魔物。
その魔物は元の魔物のランクの数段上にいくらしい。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
ブルーベアーが吠える。その声は私達の鼓膜を突き破るぐらいの吠え。普通なら耐久のステータスが少ない私は地に伏せるはずだが———
「付与魔法『遮断する音』」
詠唱無しの付与魔法、私の知識によると余程、その魔法を使い込まなければ詠唱無しは実現不可能なのに……流石、スアイフさんだ。
「あ、そういえば私武器持ってないや。デデルさんなんか簡単な武器作ってくれませんか?」
「ミルちゃんはこんな時でも落ち着いてる……流石転移者。いいよ、簡単な物しか作れないけど……何がいい?」
「ナイフで」
「はい、どうぞ」
デデルさんの手にはもうナイフが出てきた。質は普通のナイフだけどその精錬速度は異常だ。
他の人が見たらこんなことはこの森に来る前にするべきだとか言うけど、勝手ながら私は皆さんの力を見たかった。
「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
今度はフールさんがブルーベアー達に叫ぶ。スキル無しでもこれ程の咆哮、この咆哮にブルーベアーも少しビビっている。
これ程、落ち着いていて圧倒的な絶望にも動じない皆さんの姿勢に感動し、私は”使い慣れた”ナイフを構える。
「よし! いっちょやってやりましょう!」




