闇夜の戦い 尻子小唄と暗黒聖戦
R01.11.10 大幅加筆修正 おでん忍者本名変更
夜も深まり、空から冷気が落ちてくる、まだまだ霜の張るような季節でないがここは静岡青葉の通り…ビル街の中ぽっかりと空いた東西の通り…大きな立て長の広場である。大火の反省として作られたそこには水場が多く…つまりは少々肌寒い。
「…いらっしゃい、もう店仕舞いだぜ?」
「ククク…そう言うなって河童さんよう…」
田舎と言えども中心市街のど真ん中、駅周辺には夜の店も多く酔っ払いやらホームレスやらもいる。昼間のおでんの残り香が、そんな奴らを引き寄せたのか?いやおかしい、世紀末張りに大量に沸いて来る。
「黙って喰いもんよこしやがれ!!」
バキバキバキ
……ドササ
「おぉ…そっちもでござったか!」
「おう、お帰り」
繰り返し、繰り返し…酔っ払いがいちゃもんを付けて店を襲ってくる、警察呼んでも知らんぷりだ。青葉警察所なんて目と鼻の先、叫べば聞こえる距離にいるのに…
「どう考えてもおかしいな、しかも今ので20人目だ」
「ハハハ、拙者も刺客でござったから笑えないでござるな」
「そうなのか?」
歌う河童のマッチョな弟、知月は夜中に山から戻った。頼まれた食材を山ほど担ぎ…底なしの体力で働き続ける。
おでん忍者の主と認める青髪美少女=流々嬢に気に入られているので、なんとも羨ましくも頼もしい。ハゲで緑で全裸でなければ…きっとモテたに違いない。
「拙者はおでんギルドの雇われでござって、お二方の命を狙って返り討ちでござるよ」
「おぉ~、色々あったんだな嬢ちゃん達」
「あの時の拷問はトラウマでござるよ…もう熱々のおでんは怖いでござる」
ゾロゾロゾロ…
明かりの消えた路地裏から…またまた不審な集団がやってくる
「…いらっしゃい、もう店じまいだぜ?」
バキバキバキ…ドサァ
知月が首をひねって寝かしつけ
おでん忍者が秘孔を突いて寝かしつける(zzzz
噴水の前がゴミ置き場だ…お、ホームレスが荷物をガメている。ザマァ
「……やっかいでござるな」
「…ん?そうなのかい…お前さんもなかなか強い、こんな奴らコバエみたいなもんだろ?」
「いやいや、強さではござらんよ…多分そろそろ警察がきて、いちゃもん付けられてしまうでござる、奴らの汚いやり口は解ってるのでござる…ハァ」
「肝心な時は来ない癖に…ったく、俺が一番嫌いなやり口だぜ」
知月は印象通り真っすぐな男であるようだ、裏で生きて来た忍者には少し眩しい。
主殿や蘭乱殿も真っすぐだ…、もしも連中に罪を被せられるならば、日陰者である自分が被ろう…そんな覚悟を決めた時、相方知月が声を上げた。
「頭来たし俺が背負って山に捨てるか?もちろんケツを払ってもらった上でだ」
「ケツ?あぁ…ツケでござるか?いいんでござるか?」
…確かに、警察はすぐ来る様子も無い。証拠と証言を兼ねるこいつらさえ居なければどうとでもなる。ふむ…山に精通した知月殿なら、祭りが終わるぐらいまで神隠し出来るのかもしれない。
「あーいいぜ?どうせ河童の話なんて人間の警察はきかねぇし…お代も欲しい」
「むむぅ…お代でござるか?主殿ならケチらないはずではゴザルが勝手にはむむぅ…イカほどで?」
「ああ安心しろよ…お代はコレだ」
知月はごろつきの尻をポンと叩いた。ツケじゃなかったケツだった。
…河童は尻子玉が好物という、恐ろしい伝承は本当だったのだ…うぅ…尻子玉ってなんだろ。尻肉かな…
「りゅ…流血沙汰はちょっと…、下手したら死なないでござるか?」
「安心しろよ、血も出ないし、痛みも無い技がある…ただスースーするだけだ。」
ヒぃ!
この祭り中
恐らく一番悲惨な事件だ…
恐ろしい…
知月は風呂敷を広げて、担いできたフルーツを全て出した、そして噴水前に向かい、ゴロツキをざっくり30人一気に担ぐ…ドン・キホーテがロープを売っていて良かった。
ドシンドシンと逞しい肉体で背負い上げて歩く…足元のタイルを突き抜け地面に足が沈んでいる。
「ハハハ…尻子玉が大量だぜ!」
「すごいでござる!」
◆ ◇ ◆ ◇
「ほーら君たち、ちょっと頼まれごとしてくれないかな?牛すじをやろう」
「そ…それは静岡貴族の食べ物!ぎゅ…牛すじぃいい!」
暗黒おでん会は初日で出遅れた分を取り戻そうと寝ずの仕込みを続けていた。しかし早々、正攻法では巻き返せない…彼らは暗黒にその手を染めた。
いいや元々、彼らは静岡おでんギルドの暗部なのだ。心も体も真黒である。裏切り者を清水港から流刑<マグロ漁船>に処し、駿河湾に沈め、山合いのお茶摘み僻地で農奴とするか、もしくはギルドの傘下の店舗にて最低賃金以下で使いつぶす、労働基準の規約など「36協定」にサインをさせれば無いにも等しい…!
「暗黒おでん神万歳!暗黒おでん神万歳!」
「全ての命は暗黒の宇宙から生まれたのだ…称えよ、暗黒を!暗黒おでん神を!」
「暗黒おでん神万歳!暗黒おでん神万歳!」
「暗黒おでん神こそ絶対!暗黒の静岡おでんこそ絶対!認めてはならない!誓え!」
「黒くないおでんはおでんに在らず!全て等しく豚の餌!」
狂気である!他教を認めぬ一神教の闇、それが生むのは排斥と凶弾、戦争の歴史!「フルーツおでん」なる物は教義に真っ向から反抗する…正に神敵、悪魔のおでんだ。今この戦いは、彼らにとって新たな聖戦の一ページ…悪魔を倒すためなのだから、どんな手法も正義なのだ!
「ククク…心配ですねぇ…静岡と言えど夜はコワイ!」
「女の子二人の店じゃァ何があるか…おぉこわいこわい!カカカカ」
正に暗黒の笑いを浮かべ、暗黒の夜…人気のなくなった公園の方を見やる鍋番二人組。
夜の鍋番を任されるこの二人は、言わば底辺の下っ端だ…可哀そうに…敵の情報も、実力も知らず…自身の勝利に疑いは抱いて無いようだ。
……
…………
………………のし
のし…のし…のし…(……なんかきた)
のし(ベキ)…のし(ベキ)…のし(ボキ)…
◆ ◇ ◆ ◇
山の様に巨大な何かを背負った緑の全裸男が歩いてくる…踏み出す毎に地面が割れる。
警察官も気づいたようだが、あまりの恐怖で気絶した…何だ?何だあれは…な…何か歌っている!?
♪
雷様にはへそ隠せぇー
河童が出たなら尻隠せぇー
手がある者は手で隠せー
足ある者ならとっと逃げろー
手足も出ぬなら隠れて過ごせ
河童が来たなら食われるぞー
のし(ボキ)…のし(ボキ)…のし(ボキ)…
よくよく見ればその荷物、手やら足やら生えている…あっ自分達がやとった男達だ…通りすぎ様聞こえたるは不気味な歌と「うめき声」
♪
二つに割れた尻の肉
一つの馳走は尻子玉
ひとたび喰らえば夢に見る
さぁさ、とっとと尻を出せ
味わい深きは尻子玉
「「ごっわああああああああああああああああああ!」」
暗黒おでん会、夜の鍋番二人は叫んだ。
声の限り!
泣き叫び!
店をほうって駆け出した!
グツグツグツ…カチャ…
「ハハハハハハ…火の元はそのままでは危険でござるよ」
元=暗黒おでん会 おでん忍者は暗黒に笑う。戦いは非常、そしてこの三日間は…戦の間はたとえ夜でも安らぎなどない!
そんな戦いを仕掛けて来た、暗黒おでん会の店は空っぽだ、自業自得でほうっておけば勝手にリタイア、敵が減る…が
「ふむ、しかし…」
新しい主、二人の少女は嫌うだろうか…このような結末を、望まぬだろうな、優しい二人だ…きっとそうだ。
「仕方ないでゴザル…静岡おでんに知らせてやるべきか、むむ…しかし店もあまり空けるわけにもいかぬでござるし…」
うぃ~ヒック
「おいあんちゃん?暗黒おでんってのひとつおくれや」
忍者を暗黒店員と勘違いして、酔っ払いが注文を入れて来た。
「あーおっちゃん!ただで良いから頼まれてくれないでござるか?緊急でござる」
千鳥足に適当におでんを渡し静岡おんでんギルドへ託を頼んだ。
「さてと…まだまだ夜は長いでござるな」
おでん忍者は店に戻り、ただただ夜明けを待つばかり。
時を気にして時計を見れば、考える事は先の事…明日を越えた先の事
「お二人は海の向こう…沖縄琉球王国、王宮の方々とか…、なんとか雇ってもらえないでござるかなぁ」
生まれ育った静岡に愛着はある…しかし多くの闇も見た、寄る辺も無くなり、二人に出会ったも何かの縁。それに二人は最高の主だ、今日も自分達を休ませるため寝袋持参でやってきた。…主にそんな事はさせられないと、頭を下げて宿に戻っていただいたほどだ。あんな二人になら、給料無くとも仕えたい。
「やっぱり忍者は!王宮とかそういう所に仕える者でござるしなぁ~」
静岡おでんギルド、“元”ギルド長付忍者 「田楽忍」
コードネーム「おでん忍者」
「おでん忍者ってなんだよ!!」
実は自分でも思っていた。