フルーツおでん伝
R01.11.11 大幅加筆修正
「味わえぇええええ!ホタテタコイカ墨スペシャルぅうううううう!」
「くらええええええ!暗黒フルーツおでんこんぼぉおおおおおおおおおおおお!スイーツ緑茶ローテショーーーーーーーーーーん!」
「飲み干せぇえええ!インディアンおーでんんんん!スパイしーカーーりぃいい!」
「ほころべぇええ!牛乳おでぇえええええん!パンプキンくりぃいいむ!」
わー
わー
わー
余興で行われた「新作披露会兼大食い大会」の一幕である。
各テントの代表が自慢のおでんを参加者が倒れるまで提供しつづける、意味不明のイベント。二日目に段階で完全に暇になった河童と、フルーツおでんに感化されてなんか新しいの作りたくなったおでん友の会のおばちゃんが運営に提案したらしい。急きょの差し込みイベントであり、ルールもザルだがそこは盛り上がれば良いと河童が色々なアイディアを出して今の形になる。
ルールその1
店は自慢の一品を自信をもって掛け声とともに出す事
声が客席の後ろまで聞こえないと失格
ルールその2
客は出された料理を10秒以内で食べなければならない。
食べれなくなったらおでんを持って客席に退場
食べ終わったら目の前の札を上げて食べたい店に注文を出す
ルールその3
最終的に皿をカウントし、もっとも食べられてる店、
リピーターが多い店が優勝
いっぱい食べた選手が優勝
「ぐぅ…もう駄目だ!」
ブチブチ(ぽぽぽーーン!
関西のギルド長=喰倒満福の腹が膨らんでボタンが飛んだ!記録15杯
「フクースナ!(おいしい)、こんど家でもボルシチおでんとか作ってみますわ!」
東北のギルド長=貝好美那須は準優勝、着物の帯がリミッターになってしまったようで本当はまだまだイけるらしい。記録35杯
「ホイ!」(パク 「ホイ!」(パク 「ホイ!」(パク
蘭乱が追加の暗黒フルーツおでんを更に盛り、流々がほい!っと渡した皿をわんこソバの要領で知月が食う!記録108杯の圧勝であった。
会場は大盛り上がり、その派手な絵ずらのインパクトはテレビを通じ、静岡のお茶の間を賑わした。
商品の出方として以下の通りだ。
・海産おでん40杯
・静岡おでん30杯
・カレーおでん20杯
・牛乳おでん15杯
・暗黒フルーツおでん60杯
鬼門としてはカレーとシチュー(牛乳)が一般人に10秒は無理だった。そこで脱落者が大量に出て、特にカレーおでんを食べた者が暗黒フルーツおでんに殺到した。
「ハハハハ!関西東北のタッグで40杯ですか?ハハハハ!」
「静岡おでん30じゃないですか!なんで上から来るんですか恥ずかしい!」
「え~?フルーツおでんはうちの出店ですけどぉお?何かぁああ?」
「汚い!静岡汚い!」
「汚いのはあなたのイカ墨だらけの顔と出っ張った腹ですよ!全く…だいたいあなた自分のギルドのしか食べてないじゃないですか?あなたの食べた分引いたら40杯じゃなくて25杯ですからね!アハハハハハハ」
この醜い争いもお茶の間を賑わした。
最後に残った知月は、檀上の上でインタビューを受けていた。
「たまたま選んだ順番が良かったのかもな、最初に海産…静岡…カレー…シチュー…最後に甘いのはよかったぜ!……あ、あと地味に牛すじが旨かった」
わー
わー
わー
このコメントで、おでんフェスの最後にフルーツおでんに行く流れが出来た。
ちなみにカレーとシチューでリタイアする人が多かった事で思わぬ宣伝効果が起こった、…食べきれず失格となるわけだから、続きを観客席で食べるのだ。周りの人間は匂いにやられたカレーは卑怯だ…おでん友の会は午後から売り上げを伸ばした。
一方海産おでんは関西ギルドの喰倒の食べ方があまりに汚く、顔がイカ墨だらけになる様で観客がドン引きして閑古鳥が鳴いた。
「ククク…ざまあぁありませんね、海産ギルド?フハハハハ!」
牛スジを大量に追加で仕込みながら笑う田武好過、しかし…夕方のインタビューで再びマイクを向けられた知月は言ってしまった。
「いやぁ…海鮮拘りも旨かったな。クジラ肉とホタテとか初めてくったぜ!」
「やめろぉおおおおお!!貴方は嬢ちゃん達の味方じゃないのですか!?」
「アハハハハハ!」
海産連合も追加の仕込みだ、というか関西ギルドと静岡ギルドが戦ってて東北ギルドの美那須は普通に食べ歩きをしている始末。
わー
わー
わー
◆ ◇ ◆ ◇
「ははは!二人のおでんに影響受けてね、思いついて出しちゃった!」
蘭乱と流々はおでん友の会のおばちゃんの所に来ていた。
静岡おでんギルドと仲直りしたので、二人は速攻でレシピを渡して店を任せた。二日間と午前中の売り上げは回収しそのまま自由になってフラフラしている。せっかく3日間もあるお祭りだ、一日ぐらいは自由に楽しむ!
「うーん辛口うまいな、インディアンおでん。」
「私は牛乳おでんが好きよ、カボチャの甘味がたまらないわ。」
フルーツおでんの登場により…おでんと云う概念は砕かれてしまった、とても美味しく満足したが空になった器を見て思う事がある…
「うん…カレーは万物に合うな。」
「果たしてこれは…おでんなのかしら…おかわり。」
昨日クレームをくれた眼鏡の学生、彼の気持ちがほんのりわかる。うん
さすがにちょっと悪いなと思う蘭乱である。
「「ごちそうさまでしたぁ~!!」」
改めて会場を見渡しながら歩いてゆく。
カレーとシチューとフルーツと海産おでん連合の“イカ墨おでん”…一周してやっぱり静岡おでん。モグモグ(旨し!
「……すごい色んな店があるわねぇ」
「なにか…時代のうねりを感じるな」
この光景こそが「フルーツおでん」二人が巻き起こした変革であり時代のうねりだ。
…いささか、不安すぎるうねりではあるが。
「ハハハ!まぁ旨いからいいじゃねーか!」
夕刻最後に立ち寄ったスイーツおでん喫茶で知月が居た。本当に「暗黒フルーツ」が気に入ったようだ。
これは今朝の緊急即興コラボで生まれた商品なのだが元々あった「暗黒おでん会」という店名、その暗黒…というフレーズから流々の発想「あんこ」のトッピングをしたフルーツおでんだ。
これの素晴らしい所は、静岡に来た初日、流々が発見したコンボ、静岡茶を呑み口の中の甘味をリセットする事により、幾らでも食べれる技「スイート緑茶ローテーション」と相性が良かった事。
「私は静岡スイーツ史を塗り替えてしまったかもしれないわね」
「いや、流々嬢ちゃん、口甘くなったらお茶飲むだけだろ?昔からやってるぞ?この店も、も最早甘い果物が食える茶屋だぜ?餅がくいたい。」
ドヤ顔の流々に、知月はお茶を飲みつつ突っ込んだ。
餅か…団子作って串にさすか…すごい!どっかで見たコレ!串だんごだコレ!おいしいコレ!
わー
わー
わー
そんなこんなで祭りが終わった。
◆ ◇ ◆ ◇
さてさて夕方5時でアンケート締め切り、7時で結果発表っとなった。
このアンケート選ばれた最優秀店は静岡おでんの出資協力を得て店が持てる!
ピッピッピ~
参加者達とギャラリー、報道陣に緊張が走る!
「優勝は!テレビで話題の歌う河童!破外甲羅=肛情」さんのイカ墨おでんです!」
♪
器いっぱい 腹いっぱい
郷土の愛で 胸いっぱい
ノリで作った イカ墨おでん
お前らノリノリ イカスぜサンキュー!
「ありがとな!」
、
これには皆拍手喝采!どの勢力からも惜しみない祝福!何故って?
我らがフルーツおでんからすれば身内枠だ!
静岡おでんからすれば買収済みの傘下枠だ!
関西東北からすれば連盟仲間で
おでん友の会からしたら一緒に企画をとうした仲間で
…なんだこの河童!なんという…
「流石だ兄ちゃん“器”が違うぜ!」
弟河童の破外甲羅=知月は誇らしげだ!
「ハハハよくやりましたよ河童さん、さすが我が傘下、イカ墨おでんを静岡名物に加えましょう」
「すばらしいですね河童さん、関西東北でもお店を出しましょう行けますよ」
静岡)………バチッ ☆ バチッ…………(関西
「「あぁあん!?」」
まぁ、こうなる。…結果も見えたからズラかろうかと。蘭乱と流々が荷物をまとめにテントへ戻る。もう店を回すのは静岡ギルドがやってるので、荷物もって離れるだけだ…あっおでん忍者起こしてあげないと…うーん良く寝てる。
「…いやいやいや、見事でしたよ!フルーツおでんのお嬢様方!」(おででん!
…なんか出て来た!この期におよんで!
二人を呼び止めたのはフルーティーな香りを漂わせる、白髪の混じったジェントルマン!赤ワインっぽい何かを左に持ちつつ、右手で名刺を出してくる…要らん。
「わたくし…“山梨おでんギルド”の者でしてね。ククク…ご存じの通り山梨はフルーツの名産地!梨に葡萄…“フルーツ王国山梨”という呼び名もあるほどですよ!」
蘭乱と流々、二人の間に言葉は要らない…無視してスタコラ路地へ逃げ込む。
「お嬢様方のフルーツおでんをいかがでしょう?“山梨おでん”と名前を改めてもらえれば…ククク……材料から人員から店舗の支援も…あぁちょっと!」
ジェントルマンは2テンポほど遅れて二人が逃げている事に気付いた!…慌てて追いかけようとした所に更に参戦する影があり!
「あ…あなたは!山梨おでんギルド!大会参加は許可しなったはずですよ!なんでここに!?」
「フン…貴重なおでん職人を“スカウト”しに来ただけですよ、黒焦げ静岡おでんギルド!」
「なんですと…自殺者数一位の呪われた国の分際で…」
「お前が樹海押し付けるからだろ!?」
「貴方が冨士山欲しいっていうから付けてあげてるんですよ!?」
静岡)………バチッ ☆ バチッ…………(山梨
「「あぁあん!?」」
…ッは!?殺気!堪らず起きた忍者の目に、路地へと消える二人の背中!あれ?もう夜?お祭り終わり?置いてかれてるぅう?
「あぁ!お二人とも!待つでゴザル!ついて行くでござるよ!」
……
…………
………………トトトト
後ろで三人が騒いでいる街を抜け…一行はそのまま賎機山へ、そこで知月と合流した。予定では一日休んで河童村だが、街に残ると面倒そうだからこのまま向かう。既に真っ暗な山中を進みながら、祭りの感想と最後の騒動を話あう。
イカ墨おでんの優勝で、せっかく仲良く終われたのに…やっぱり地方の闇は醜い。
「あー、静岡と山梨は富士山を巡って3000年ほど昔から戦っているんだよ。」
「ちなみに樹海は押し付け合ってるでござるな」
知月と忍者が教えてくれた。
「う~ん、めんどいな」
……旅をせずとも、出会いがあって、別れがあって発見も出来るお祭りは確かに良い物である。
しかしシガラミや色々考えたら、山越え谷越えが蘭乱には合う。
「…嬢ちゃんはやく、また旅に行こうぜ!?そろそろ華のお江戸だろ?」
「そ…そうね!し…知月さんの村でお礼してからら////!」
「……?」
こうして一行の静岡旅行は幕を閉じた。
◆ ◇ ◆ ◇
わー
わー
わー
世界おでん史に激震を呼ぶ、“第一回おでんフェスタ”は幕を下ろした。
フルーツおでんに始まって
イカ墨おでん
インディアンおでん
牛乳おでんと
この大会は伝説だ。
イカ墨おでんに関してはほぼ全国で出店が決まり
東北おでんギルドはこのあとボルシチおでんを開発する。
山梨おでんギルドはフルーツおでんのレシピを盗み、自慢のワインで煮込むという改良を経て「山梨おでん」御旗を上げた。
参加者達は気づかなかった、いや、三日間の戦いが目がぐるし過ぎて、ただただ必死に戦っていたのだから仕方が無い。しかし歴史は、書に記されて初めて残る。
誰もがおでんの熱に当てられ、書きとめる事も無かったこの三日間の刻一刻を黙々と記録する男が居たのだ。
静岡大学 郷土料理研究サークル所属
“合瀬=妙事”はこの祭りに出品された多種多様なおでんをリスト、研究し一つの論文を学会に提出した。
「おでんの定義~フルーツおでんはおでんか否か~」
その答えは賞賛と非難、賛成と罵声を交互にうけて…今後もまだまだ、白熱した議論が続くのだろう。
料理とは、人から人へと届ける物
料理とは、人から人へと引き継ぐ物
料理とは、時代と共に変わりゆく物
料理の歩みは歴史の歩み
人々が歩みを止めない限り、伝統は崩れ、新たに生まれ…歴史はうねる。
この物語はそんな歴史のほんの一部だ。
あぁ、今ここに伝説がページ
これこそ静岡の地に語り継がれる「フルーツおでん伝」の物語。(おででん
♪
器いっぱい 腹いっぱい
郷土の愛で 胸いっぱい
伝統伝えし 静岡おでん
常識破りし フルーツおでん
そして集った 色々おでん
伝説作った フルーツおでん
優勝したのは イカ墨おでん
器空っぽ もう一杯
時代はうねるよ 夢いっぱい
「ありがとな!イカスぜお前ら!」
本編修了 次回→ その後のお話 河童村編へ