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会社から出ると、まだ日差しは東の方で
ビルなどに隠されていた。
どこともなく名も知らぬ女と歩いているとビルの隙間から突如として強い光が僕の目に刺さりたまらず目を瞑ってしまった。
「えっと…お名前は?」
僕はビルの影になるのを見計らい、影になった瞬間すかさず聞いた。
「ほんとうに覚えていらっしゃらないんですね。私は藤崎と言います。あなたは?」
僕は彼女の顔を見ていたがまた太陽によって前を向かなければならなかった。
彼女の方は僕の方をずっと見てくれている。
「私は荒木と言います。覚えていないとは?私はあなたとは初対面だと思うのですが。」
僕は前を見ながら彼女に話す。
「少しどこかでお話ししませんか。あそことかどうです。」
そう言って彼女は僕のシャツをちょんと引っ張った。
僕はなぜだかそのちょっとした彼女のスキンシップに動揺してしまう。
「あぁ、そうですね。あそこにしましょうか。」
そうして僕たちはカフェの中で話をすることになった。
中に入るとまだお昼前だが、お客がたくさん席に座っていた。
テーブルとカウンターがあるがテーブルの方は空いていないかもしれない。
できればテーブルで話したいのだが。
「何名様でしょうか。」
店員が客の注文を切ってすたすたと歩いて来た。
「2人です。」
店員は僕達に聞く前から席は決まっていたかのようにそのまままっすぐ席に案内してくれる。
運の良いことにカウンターではなく、奥のテーブルが1席空いていたようでそのテーブル席に案内してもらった。
「カウンターだとなにかと話しづらい。テーブルで良かったですね。」
僕は空気を和ますよう、そう彼女に話しかけると"そうですね"と微笑み返してくれた。
お互いに珈琲を注文し、やっと本題に入る。
「えっと。じゃあ今日のことについてまず私から話しますね。」
彼女はまっすぐ僕の顔を見て"はい"と返答する。
「今日は、1日僕とお話してもらいます。それはなぜあなたが会社の中にいたのかを知るためです。警察事になるのもお互い嫌だと思いますのでここでのお話で解決したいと思ってます。了承していただけますか?」
「えぇ分かりました。」
彼女は僕に1日拘束されることをなんの躊躇もなく受け止めた。
それだけ警察に届けられるのが嫌なのか
それともそれだけのきちんとした理由があるのか…
頼んだ珈琲もちょうど、2人の前に置かれた。
僕は彼女が会社にいた経緯を聞くことにした。




