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【一章】はじまり



俺たちの始まりはそこからだった。




イーブァン・フォン・ユースベリアーー・・・この国、ユースベリア大国の第1王子に出会ったのは、俺がまだ12歳で万引きやら窃盗やら、とにかく、そういう後ろ暗い行為(犯罪)で生活をしていた頃だった。




ユースベリア大国の王都から西部の1番端っこにある「アルメリア」という主都で俺は産まれた。

ーー・・・といってみたが、本当にそこが俺の産まれた場所なのかは分からない。


端的に言うと、俺は孤児院に捨てられていたからだ。


俺が1歳の頃だというので、当然、親が誰かなんて覚えていることは何も無い。捨てられていた場所がアルメリア領の孤児院であったから、院長はここの領地で産まれたのだろうと言っていた。

1歳まで恐らく、親元にいたのだ。

親は何らかの理由があって、俺と別れるしかなかったのだろう、と院長は目尻にある皺をさらに皺くちゃにして俺の頭を優しく撫でて言った。


「アルレルトには、お母様お父様の優しさや愛情が(のこ)っているわ」


院長の骨ばった指先は、柔らかくもなくて、触れられると少しばかりカサカサしている。だが、とても柔らかく撫ぜるものだから、いつも身の置き所が無いような・・・・・・そんな気持ちにさせられた。

院長の丸メガネの向こうにある若草色の瞳は、慈悲と生命力に溢れている。

その目が俺は好きだった。


布に(くる)まれ捨てられた俺が、親から与えられた唯一のものが「アルレルト(名前)」だった。

孤児院では、産まれたての赤子が名無しの権兵衛(ごんべえ)で捨てられるというのはよくあることだ。

名前を貰っていたら御の字くらいの扱いだった。

孤児院には、赤子から18歳ぐらいの子供達が40人程度生活している。

10歳ぐらいまでの年少者らは、街に遊びに出かけたり、下の面倒を見たりして自由に過ごしている。勉強を強いられもするが、生きていく為に必要だと言われれば仕方ない。

年長者らは、街で仕事を貰って小金を稼いだりもしている。仕事といっても、子供が出来る範囲の簡単なものだけれど。


アルメリア領は王都から西部の一番端にあるが、海に面していることもあり、国外からの輸送も頻繁だ。地続きでユースベリア大国の隣国であるカンデルス国との国交も行われていた。

カンデルス国は、ユースベリア大国に比べて小国だ。しかし、その国で造られる武器は多種多様で、また強度も威力も他国に比べ非常に高い。武器を扱えばユースベリア大国と同等の武力を持ち、周辺国からは軍事国家と一目置かれている。

ユースベリア大国とカンデルス国は100年以上前に協議の末、戦争時の助力・常時の交易等を締結し友好関係を築き上げていた。

国境であるアルメリア領には、形式上の国境防衛軍が王都から派遣され、砦には常時選りすぐりの隊員が配置されている。


交易に防衛軍ーー・・・頭の中身がまだ出来上がってない子供には、領地内の全ての仕事がかっこよく見えた。否、見えて当たり前なのだ。

海上輸送隊・防衛軍等全て含めて俺たちの、国民の将来的な平和の為に存在していたのだから。

そういった彼らの仕事ーー・・・荷運びから荷解き、果ては荷物箱の製造まで、若しくは防衛軍部での家事等雑務は「カッコイイ大人達のお手伝いができるし金も稼げる」子供達にとって良い仕事だった。


そういった小銭を稼いで独り立ちする為に貯蓄したり、院長に手渡して普段より少しばかり豪勢な食事を楽しんだりして俺たち孤児は、日々を平穏無事に過ごしていた。



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