スーパーマーケットにて
8時に仕事を終わって家に帰る前に
ビール6本と半額の刺身と半額のてんぷらを買って
ハローズの店から出てきて車のドアを開けようとして
スーパーの袋と財布の入ったバッグを持ったまま
歩きながら上着の右ポケットを探っても
左のポケットを押さえてみても
ズボンのポケットになんとか手を突っ込んでみても
ケータイと万歩計には触るけど
家のカギと職場のカギと車のキーの感触がどこにもないし
体をゆすっても鍵束の音がしないことがわかって
ここ通ったよなと思う所を戻って
店の中に入って3番のレジの近くまで行って
買い物を詰めたステンレス台のところまで行って
もしかしたら財布を出して仕舞った時に
バッグの中に一緒に詰め込んだのかもと思って
ぱんぱんに詰め込んだ黒の小さなバッグのファスナーを開けて
黒の皮財布を取り出して黒いメモ帳も出してその横を見て
黒のメッシュの袋に入ったデジカメとデジビデも出してその下を見て
黒の袋とグレーの袋に入った接続コードや
USBやSDカードやらを出してバッグの底を見て
それでも見当たらない と思って
バッグを覗き込んでた顔を上げると
2番のレジの隣にある誰も人がいないステンレス台の上に
鍵束だけがポツンと残ったままになっていた
「ああ、こんなところにあったんだあ」と声を上げたら
レジを終えていつの間にか隣に来てた
背の低い白髪を少しだけ紫に染めた
背筋のしゃんとしたおばあちゃんに
「若いのに―」と大声で一言言われて
なにも言いたくなかったんだけど
「すいませーん」ムニャムニャムニャッと言って
急いで駐車場へ戻った
何年も前の経験になるのだけど、当時
認知症の始まりかと思った。
今はもっとひどくなってるような気がするので
あながち・・・。
恐ろしや。
クワバラクワバラ。