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7 空間歪曲

 スカイは空間を歪めて、鉄格子の間から外へ出た。


 一瞬、自分が自分でなくなるような感覚に襲われ、そしてすぐにそう感じたことさえ忘れるように自分を自覚する。


 空間を歪めて何かを通り抜けるとき、スカイの体は一瞬、この世界に折り重なる別の世界に置かれているのだと師匠は言っていた。


 そこは時間とは別の軸で動いている世界で、生半可な精神力や魔力の持ち主では一瞬にして精神ごと消し飛んでしまうという。


 スカイの師匠はそれを秘術中の秘術として、自分の教え子以外には隠匿した。教え子に対しても、空間転移など「自分に作用する」時に限り使用を許可した。


 悪用すれば人一人を簡単に廃人にして、痕跡すら残らない、そんな魔術だった。

 そして結局、スカイが在籍した特殊クラスの中でも、自在に操れるようになったのはスカイだけだった。


「あー!スカイずるいー!」


 スカイ一人が鉄格子の外に出たことに気づいたリウイが声をあげる。スカイは鉄格子の外側からちらりと部屋の中を見やったが、すぐに向き直る。

 調査行動は人数が少なければ少ないほど良いし、リウイはどう考えても隠密行動向きではない。


「リウイは一人のベッドを堪能してろ。・・・部屋にライラが来たら知らせてくれ。二人ともいなかったら逃げたと思われるだろ」


「今の状況でもジューブン逃げたと思われるとおもうケド?」


「ま、あと町に待たせてるあいつ等から連絡があったら知らせること。」


「ユエとアッシュに連絡もさせてもらってないのに連絡くるわけないじゃん!」


(連絡は、したさ。)


 リウイの叫びにもう一度片手を振って答える。


 その右手で空中に魔術文字を描いたスカイは地面を蹴った。


 難しい魔術文字ではなく、単純に音を消す魔術だった。そのまま集落を屋根づたいに散歩する。


 スカイが、単独行動、隠密行動用の13番目の使徒に選ばれたのは、スカイ本人の希望と言うより、持って生まれた魔術の性質が限りなく隠密行動に向いていたからだった。


 呪文を使って魔術を使うには、自分の魔力を使い呪文を媒体にする呪文魔術と、魔族との契約で自らの血を媒体にする黒魔術。精霊と契約して自らの精神を媒体にする精霊術がある。


 呪文魔術の媒体は人によって個性、というか特異例があることが認められている。


大多数の人間は、呪文を声に出して魔術を行使するが、スカイは呪文を空中に書くことでも魔術を行使することができた。


 これはスカイだけに認められている特徴だった。


 特異な呪文魔術の行使方法を持っている魔術師は、それを切り札として隠匿することが多い。


 スカイも文字を使って魔術を使えることに関しては、身内以外には隠匿してある。


 ふと、スカイは思考を魔術の構成から目の前の景色に切り替えた。


 そこは村の洗濯場で、探し人ーーライラがいた。


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