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獅子がうなる度に、炎が吹き出し。長い尻尾が瓦礫を炭にする。
「なんだありゃ・・・」
右手が光の文字を描く。これは防御用の文字だ。スカイの魔術師としての強みは、使える魔術が複数種類あることだ。通常の魔術師は、呪文を使った魔術しか使えない。攻撃すれば防御はできず、防御中は攻撃が出来ない。
「巨人の右腕よ!」
声を使って、掲げた右手の先にある鉄柱を持ち上げて獅子にたたきつけたが、獅子が前足で触れただけでぐにゃりと溶けた。
「あいつ自体がものすごい高温なのか・・・?」
一足歩くごとに、熱風が巻き上がり、触れてもいないのに木造の小屋は炎をあげて燃えさかる。
(あいつを移動させるなーー村が燃え尽きる!)
「世界よ!」
呪文によって獅子の前足部分の空間をねじ曲げた。着地するはずの地面を失った体がもんどりうって倒れる。
獅子のたてがみの毛束のひとつが炎の矢となり、スカイを焼き尽くそうとするーーが、スカイの手元にある光の文字が輝いて、障壁を生み出した。
通常の魔術師の戦闘と違ってスカイの戦闘には隙が生まれにくいのだ。呪文で攻撃し、描いておいた文字で防御する。魔術師はーー特にバグ狩り部隊はチームで行動する。誰かが防御を担当し、誰かが攻撃を担当する。群れれば隠密行動には向かないが、スカイは理論上、それが独りで出来る。チームが必要ない。
「閉じろ!」
獅子の前足を別の空間にとばしたまま、無理矢理それを閉じた。普通の生き物であれば、別の空間に存在する部分がちぎれ飛んで血が吹き出すーーが。
獅子はーー前足を、もう一度生み出した。たてがみの一部が膨張し、体を包む。次の瞬間には前足が復活している。
(あいつはーーあの姿は何だ?)
小物であれば、切り落とした鎌は復活せずーーその状態のままで襲いかかってくるのだが、あいつは復活させた?
フォォォォン!
獅子が唸り、たてがみの質量が爆発的に増えてーー巨大な炎の柱が視界を包み込んだ。




