表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
備前宰相の猫・二巻  作者: 山田忍
5/30

猫と忍術(前編)

 朝になり、

「ふにゃ~あ~……ん?」

 朝起きて、足元を見ると、風呂吹き大根や大根葉の佃煮や煮魚の豪華な食事が‼

「こ、これは……?」

「あら、猫ちゃん。今頃起きたの?」

「如月⁉ これって?」

「見ての通り、ボクが作ったのさ」

「如月が⁉」

「そう。それより、猫ちゃん。秀家とキクラゲは食べているわよ」

 オレが見ると、八郎とエリンギが食べているが、エリンギが食べているのは、隅っこにある汁掛け飯ではなく、恐らくオレの膳だ。

「エリンギ‼ それはオレのだろ‼」

「バカ猫のは汁掛け飯だ‼ 俺のがこれだ‼」

「エリンギ! 後悔するぞって言ったのは、どの舌だ‼ 何でオレのを食っているんだ⁉」

「美味そうな飯は俺の物だ! さっさと汁掛け飯を食え‼」

「ったく……」

 これ以上言っても面倒なので、オレが汁掛け飯を食う事にする。

「……」

 ……美味い。

 出汁が効いていて美味い。

「如月って、料理上手なんだな」

「この程度なら誰でも出来るよ。猫ちゃんでも」

「如月は色事だけではない、と言う事だな」

「まあね。人を喜ばし、殺す様になっているからな」

「殺すって……」

「そうだな」

 オレ達の食事が終わると、八郎がある事を言った。

「猫丸、えりんぎ。忍術について学ばないか?」

「忍術?」

「そうだ。かとりから忍術を学ぼうと思うのだが……」

「かとりから? 教えてくれ‼」

「猫丸なら言うと思った。えりんぎはどうする?」

「何故、俺が忍術を学ばないといけないんだ?」

「えりんぎは参加しないのだな。では、見学していてくれ」

「ふん」

「ボクもヒマだから参加してもいい? 着物はあるから」

「如月もか、如月も参加と……」

 如月は着物って言っていたけど……。

「で、この格好で参加するのか?」

「いや、着物は私が用意しよう」

 さっそく、八郎が用意してくれた着物に着替えて、外に出た。

「久しぶりー‼ 猫丸ー‼」

「久しぶりっすね。かとりさん」

 この丸っこく背の低いハイテンションな忍之者が、かとりだ。見た目はああだが、結構、腕が立つ忍之者だ。

「本日はー‼ 教えるのにー‼ もう一人ー‼ 仲間がいるよー‼」

「もう一人?」

「出ておいでー‼」

 後ろから走り、オレ達の上を飛び上がってきた忍之者が現れた。

「これがー‼ かとりの娘ー‼ さとりさー‼」

 かとりの隣にいるのは、背の高い、目だけしか分からないが美人のくノ一だ。そして……爆乳だ。

 こうなると当然——

「ふにゃ!」

 エリンギが忍者のコスプレをしたので、オレが小声でエリンギに言うと、

「何だよ! 何で今頃、参加するんだよ‼」

「猫の忍者、略して猫忍だぞ‼ 猫が忍者になって、何が悪い‼」

 エリンギも小声で応対した。

「悪くはないけどさあ……」

「さあー‼ 皆で楽しい忍術を学ぼうー‼」

「……」

 さとりを見ると不機嫌そうだ。

「え、えっと……」

 さとりは威圧的にオレ達に近寄り、

「何だ。この着物は忍之者を舐めているのか⁉」

「「えっ⁉」」

 オレと八郎が着ているのは、黒色の忍者服だ。文句を言われる筋合いはない。

「忍之者は柿渋色と決まっているのだ! 黒は高価で見つかりやすい色だ‼」

「えっ⁉ そうなの⁉」

「そうなのか。初めて知った」

「じゃあ、柿渋色の忍者服って用意出来る?」

「ああ、少し待っていろ」

 オレ達は忍者服を待っているが、まだ、さとりの怒りは収まらない。

「そして、何だ‼ 女‼ その着物は⁉」

「くノ一の服よ。文句ある?」

 如月の着物は腕と胸と太ももを見せた露出度の高い着物だ。

「そんな忍之者が居るか‼ 控えろ‼」

「いいじゃない。露出度高くて、ボクも君もくノ一だもの」

「くノ一なぞ……下賤な‼ やめんか‼」

「何で、くノ一って下賤なの?」

「女の忍之者をくノ一と言うが、くノ一は色を使う術の事だ‼」

「……そうなんだ」

「それより、さとりとか言ったわね。ボクとくノ一ごっこしない?」

 如月は官能的にさとりに近寄って手を伸ばしてきたが、さとりは少し距離を取り、

「ふざけるな! 女‼ やめろ‼」

 如月の手を叩き、離れた。

「あら、そう。また後で楽しみましょう」

 如月は何処かに去ってしまった。

「何なんだ。あの女は」

 さとりが激怒していると、オレ達に柿渋色の忍者服がやってきた。

「きた様だな」

「着替えようぜ」

 オレ達がこの場で着替えようとすると、

「そこで着替えないでくれ‼ よそで着替えてくれ‼」

「「えっ?」」

 さとりが顔を赤らめて、オレ達を睨みつけている。

「分かった。じゃあ、違う場所で着替えてくる」

「少し待っていてくれないか」

 オレと八郎はその辺の茂みに隠れて、柿渋色の忍者服に着替えてから、かとり達の元に行った。

「着替えたぞ」

「これでいいだろ」

「ああ」

 さとりは、オレ達の忍者服を見て、納得した様だ。

「ではー‼ これからー‼ 忍術についてー‼ 学ぼうー‼」

「覚悟はいいか?」

「いつでも出来ている」

「ああ!」

「ふにゃ‼」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ