猫と忍術(前編)
朝になり、
「ふにゃ~あ~……ん?」
朝起きて、足元を見ると、風呂吹き大根や大根葉の佃煮や煮魚の豪華な食事が‼
「こ、これは……?」
「あら、猫ちゃん。今頃起きたの?」
「如月⁉ これって?」
「見ての通り、ボクが作ったのさ」
「如月が⁉」
「そう。それより、猫ちゃん。秀家とキクラゲは食べているわよ」
オレが見ると、八郎とエリンギが食べているが、エリンギが食べているのは、隅っこにある汁掛け飯ではなく、恐らくオレの膳だ。
「エリンギ‼ それはオレのだろ‼」
「バカ猫のは汁掛け飯だ‼ 俺のがこれだ‼」
「エリンギ! 後悔するぞって言ったのは、どの舌だ‼ 何でオレのを食っているんだ⁉」
「美味そうな飯は俺の物だ! さっさと汁掛け飯を食え‼」
「ったく……」
これ以上言っても面倒なので、オレが汁掛け飯を食う事にする。
「……」
……美味い。
出汁が効いていて美味い。
「如月って、料理上手なんだな」
「この程度なら誰でも出来るよ。猫ちゃんでも」
「如月は色事だけではない、と言う事だな」
「まあね。人を喜ばし、殺す様になっているからな」
「殺すって……」
「そうだな」
オレ達の食事が終わると、八郎がある事を言った。
「猫丸、えりんぎ。忍術について学ばないか?」
「忍術?」
「そうだ。かとりから忍術を学ぼうと思うのだが……」
「かとりから? 教えてくれ‼」
「猫丸なら言うと思った。えりんぎはどうする?」
「何故、俺が忍術を学ばないといけないんだ?」
「えりんぎは参加しないのだな。では、見学していてくれ」
「ふん」
「ボクもヒマだから参加してもいい? 着物はあるから」
「如月もか、如月も参加と……」
如月は着物って言っていたけど……。
「で、この格好で参加するのか?」
「いや、着物は私が用意しよう」
さっそく、八郎が用意してくれた着物に着替えて、外に出た。
「久しぶりー‼ 猫丸ー‼」
「久しぶりっすね。かとりさん」
この丸っこく背の低いハイテンションな忍之者が、かとりだ。見た目はああだが、結構、腕が立つ忍之者だ。
「本日はー‼ 教えるのにー‼ もう一人ー‼ 仲間がいるよー‼」
「もう一人?」
「出ておいでー‼」
後ろから走り、オレ達の上を飛び上がってきた忍之者が現れた。
「これがー‼ かとりの娘ー‼ さとりさー‼」
かとりの隣にいるのは、背の高い、目だけしか分からないが美人のくノ一だ。そして……爆乳だ。
こうなると当然——
「ふにゃ!」
エリンギが忍者のコスプレをしたので、オレが小声でエリンギに言うと、
「何だよ! 何で今頃、参加するんだよ‼」
「猫の忍者、略して猫忍だぞ‼ 猫が忍者になって、何が悪い‼」
エリンギも小声で応対した。
「悪くはないけどさあ……」
「さあー‼ 皆で楽しい忍術を学ぼうー‼」
「……」
さとりを見ると不機嫌そうだ。
「え、えっと……」
さとりは威圧的にオレ達に近寄り、
「何だ。この着物は忍之者を舐めているのか⁉」
「「えっ⁉」」
オレと八郎が着ているのは、黒色の忍者服だ。文句を言われる筋合いはない。
「忍之者は柿渋色と決まっているのだ! 黒は高価で見つかりやすい色だ‼」
「えっ⁉ そうなの⁉」
「そうなのか。初めて知った」
「じゃあ、柿渋色の忍者服って用意出来る?」
「ああ、少し待っていろ」
オレ達は忍者服を待っているが、まだ、さとりの怒りは収まらない。
「そして、何だ‼ 女‼ その着物は⁉」
「くノ一の服よ。文句ある?」
如月の着物は腕と胸と太ももを見せた露出度の高い着物だ。
「そんな忍之者が居るか‼ 控えろ‼」
「いいじゃない。露出度高くて、ボクも君もくノ一だもの」
「くノ一なぞ……下賤な‼ やめんか‼」
「何で、くノ一って下賤なの?」
「女の忍之者をくノ一と言うが、くノ一は色を使う術の事だ‼」
「……そうなんだ」
「それより、さとりとか言ったわね。ボクとくノ一ごっこしない?」
如月は官能的にさとりに近寄って手を伸ばしてきたが、さとりは少し距離を取り、
「ふざけるな! 女‼ やめろ‼」
如月の手を叩き、離れた。
「あら、そう。また後で楽しみましょう」
如月は何処かに去ってしまった。
「何なんだ。あの女は」
さとりが激怒していると、オレ達に柿渋色の忍者服がやってきた。
「きた様だな」
「着替えようぜ」
オレ達がこの場で着替えようとすると、
「そこで着替えないでくれ‼ よそで着替えてくれ‼」
「「えっ?」」
さとりが顔を赤らめて、オレ達を睨みつけている。
「分かった。じゃあ、違う場所で着替えてくる」
「少し待っていてくれないか」
オレと八郎はその辺の茂みに隠れて、柿渋色の忍者服に着替えてから、かとり達の元に行った。
「着替えたぞ」
「これでいいだろ」
「ああ」
さとりは、オレ達の忍者服を見て、納得した様だ。
「ではー‼ これからー‼ 忍術についてー‼ 学ぼうー‼」
「覚悟はいいか?」
「いつでも出来ている」
「ああ!」
「ふにゃ‼」