表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
備前宰相の猫・二巻  作者: 山田忍
4/30

猫と家出

 今日はついに、この日だ。

「猫丸、行くぞ」

「ああ! わかっている‼」

「雌猫! 女‼」

 ついに備前に行く日だ。

「お土産も買ったし、行くか!」

 こうして、オレ達は備前に行く事になった。

「着いたぞ。猫丸」

「ああ」

 久しぶりに見た城だ。

「石山城に来たぞ」

「ああ、相変わらず、城って感じしないけど」

 石山城は城と言うより、砦の様な城だ。

 オレ達は石山城の一室に荷物を置くと、すぐに外に出かけた。

「さて、居るかな?」

 近くの村に来ると、三人の子供が遊んでいた。

「おーい!」

「あっ、猫丸!」

「猫のアニキ」

「猫丸さん」

 遊んでいたのは、背の高いリーダー格の男の子が勘一郎で、一番小さい子が太助と言い、女の子が太助の姉のるいだ。

 三人共、少し背が伸びた様だ。

「久しぶり、これはお土産だ」

 オレは三人に、けん玉やヨーヨーや独楽に金平糖を贈ると、

「猫丸、これは何だ?」

「これは、けん玉って言って、こうやって遊ぶんだ」

 オレがけん玉でパフォーマンスをすると、三人は興味津々でオレを見た。

「すごい! やり方教えて‼」

「これはな——」

 こうして、三人との楽しい時間を過ごしていった。

 三人と別れ、夜になり、石山城に帰った。

「猫丸。夜になったな」

「ああ」

「雌猫ちゃんとも遊べたぞ」

「エリンギ。お前な」

「まあ、良いではないか。それより、眠れないな」

「早く寝ないといけないだろ?」

「分かってはいるが、少し眠れないのだ。猫丸、その板の物語を見せてくれないか?」

「いいよ」

 オレの持っている板=スマートフォンの中にあるマンガを八郎は気に入っているんだよな。数か月前に姉ちゃんが来た時に、新刊とか見せてもらった時はオレと八郎の二人で一緒に見たし。

 エリンギは眠り、二人でマンガを読んでいると、

「猫ちゃーん‼ 居る?」

 外から大声が聞こえたので、八郎は刀を、オレは木刀を持って身構えると、

「居るだろ‼ 猫ちゃん‼」

「この声は……」

 寝ているエリンギを置いて、オレと八郎が外に出ると、外で待っていたのは、

「「如月!」」

 如月がオレ達の前に居た。ここは備前だぞ⁉

「猫ちゃん。秀家。遊びに来たわよ」

「秀家とは、あまりその名で言うな」

 何故、八郎はあまりその名で言うな、かと言うと、秀家は八郎の(いみな)で、目上の者を諱で言うのは失礼な事なので普通は通称で呼んでいる。まあ、官職がある者は官職名で呼ぶのがいいんだよね。オレも初めは怒られたし……。

「いいじゃない。それより、遊びに来たわよ」

 如月を中に入れ、話を聞く事にした。

「如月、何があったのだ? 何故、備前に来たのだ?」

「遠いだろ。ここまで」

「ああ? ボクの足なら近い方だよ。すぐ着くさ」

「すぐ着く距離か?」

「ボクにはね」

「如月、教えてくれ。備前に来た理由を?」

「家出だよ」

「「家出⁉」」

「そっ、い・え・で!」

「家出って、何かあったのか⁉」

 如月は不機嫌そうな表情になり、

「ゴミの奴だよ」

「如清さんが、どしたん?」

「ゴミの奴がボクに縁談を勧めてきたんだよ」

「え、縁談⁉」

 確かに初めは驚いたが、この時代では如月ぐらいの年齢なら結婚適齢期だ。

「如月の年なら如清殿も勧めはするだろう」

「……如月、するワケ無いよな」

「当然だ‼ ボクは弥九郎様の性奴隷だぞ‼ 何で他の馬の骨と結婚しなきゃいけねぇんだよ‼」

「「…………」」

「とにかく、ゴミが結婚破棄するまで、ボクはてめぇらと過ごす‼」

「「ええっ⁉」」

「それまでは、猫ちゃんとの付き合いだ。言う事は少しなら聞いてやる」

「す、少しなら、って……」

「では、帰ってくれないか? 如清殿の為にも……」

「それはねえよ。ゴミの為は無い」

「駄目か」

「ンニャンニャ……何だ。うるさい……」

 今まで寝ていたエリンギが起き上がった。

「ん……何だ……如月か……。如月ぃ⁉」

 横になりかけたエリンギが目を覚まして、如月を睨みつけた。

「如月‼ 何の用だ⁉」

「家出、それだけ」

「家出⁉ 知るか‼ 帰れ‼」

「帰らねえよ。ここに居させてもらう」

「バカ猫‼ ボンボン‼ 追い返せ‼」

「うーん……追い返せって、言われても……」

「もう遅い。朝でもいいだろう」

「こいつなら、夜も朝も関係無い‼ 早く追い返せ‼」

「今夜は、如月の寝る場所を用意する。朝になってからにしよう」

「はあ⁉ 朝だと‼」

 エリンギは絶叫しているが、如月はオレに色目を使い、

「あら、猫ちゃんと一緒でもいいのよ」

「嫌だよ! 如月と一緒は‼」

「そう、残念ね」

 如月は戸を開けて、外に出ると、

「ボクは何処でもいいのさ、寝床なんて」

「「あっ⁉」」

 気が付くと、如月は何処かに行ってしまった。

「どうする?」

「初日だと言うのに、明日から苦労しそうだな」

「後悔するぞ。バカ猫、ボンボン」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ