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備前宰相の猫・二巻  作者: 山田忍
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猫の会話

 夜、部屋で俺とバカ猫の一匹と一人になった。

「エリンギ。あの加州なんちゃら清光と大和守安定って、一体なんなん?」

 バカ猫め、お気楽に聞くな。

「ああ、あれか。あれは、新撰組、沖田の刀だ」

「あっ‼ それなら、知って——」

「万事屋の奴ではないぞ」

「…………」

 バカ猫は座り込んで落ち込んだ。

「何故、落ち込む?」

「オレが知ってるのが出て来ると思ったのに……」

 バカ猫。お前、浅すぎるぞ。

「本当にバカ猫だな。いいか、加州清光や大和守安定の二振りについてだが、後の江戸時代と言われる時代の打刀で、この時代の人間は知らないのが当然なんだ!」

「そうなん⁉ だから、八郎や孫七郎さんや虎之助さんは知らんかったんか!」

「そうだ。そして、この二振りは、バカ猫の時代では、共に所在不明となっている打刀だ」

「所在不明⁉ でも、何で⁉」

「あの馬鹿二人が何処かで盗んできたのだろう。盗んできたから、俺達があの二振りを手に入れただけだ」

 二振りの事が分かったバカ猫は、また真剣な表情になり、

「じゃあ、蛍丸は……」

「蛍丸はGHQに押収されてしまい、行方不明になった刀だ。蛍丸に何があったのかは、調べてみないと分からないが、あいつらが見つけた時には、あのようなボロボロの姿になってしまったのだろう」

「だから、錆びて抜けない刀になったのか……そういや、エリンギ」

「何だ?」

「数珠丸恒次って、どうなるんだ? 結局、ああしたけど……」

 そう言えば、数珠丸恒次、バカ猫とボンボンの意向でああなったな。だが、

「数珠丸恒次か? 江戸時代中期頃に流出し、宮内庁が見つけたのだが、元にあった久遠寺ではなく本興寺(ほんこうじ)と言う寺に数珠丸恒次は納められたのだ」

「そうなん⁉ えっ⁉ じゃあ——」

「気にするな。あの二人が数珠丸恒次を盗んだ事で何かが変わったのかもしれない。それを信じるんだな」

「……わかった。信じてみる」

 バカ猫は安心した顔になった。

「じゃあ、俺は寝るぞ」

「ああ、お休み。エリンギ」

 俺とバカ猫は眠りについた。

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