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備前宰相の猫・二巻  作者: 山田忍
28/30

猫と展示会

 数日後、

「これが、数珠丸恒次か」

「本物を見たのは、初めてだ」

 オレ達は上様の許可を得て、大坂城の一部を使い、数珠丸恒次の無料展示会を行った。

「すごいな」

「見事な物だ」

「素晴らしいわ」

 数珠丸恒次の展示会は大好評で次から次に客はやって来る。

「猫丸。大繁盛だな」

「ああ。見せたかいはあるな」

 大坂中から様々な人達が集まって来る中に、

「来たぞ! 猫」

「虎之助さん。来たのですか?」

「ああ。当然、数珠丸恒次を見に来た」

「そうですか。じっくり見学してください」

 虎之助さんもやって来て、知っている人達も数珠丸恒次を見学している事が分かって、少し経つと、

「猫よ。この太刀が数珠丸恒次とはな」

「あっ、花房のおっちゃん!」

 なんと、八郎の家臣、花房のおっちゃんも来ていた!

「まさか、数珠丸恒次をこの目で見る事が出来るとは、思わなかったのう」

「そ、そうですか」

 オレが動揺していると、八郎は、

「猫丸。備前は、備前法華と言われるほど、日蓮宗の者が多いのだ。それを考えれば、数珠丸恒次を見たい者は多いだろうな」

「へー。そうなん」

 どうりで、宇喜多家の家臣も多いと思ったよ。ちなみに宇喜多家の人や日蓮宗以外の人や武家で無い人も数珠丸恒次を物珍しさか、見に来ている。

「ん?」

 チャリンと音がしたので、足元を見ると、エリンギが座っている前に籠が置いていて、見学人が、お金を籠の中に入れている。

「エリンギ‼ 何だよ‼ これ⁉」

 エリンギは小声で、

「見て分からないのか? 見学料を稼いでいるのだ」

「見学料?」

 よく見ると、エリンギの後ろの看板に数珠丸恒次の見学料、一人五文と書かれている。

「そうだ。数珠丸恒次の見学料、一人五文と言う事にして、稼いでいるのだ」

「で、その金は何処に?」

「当然、俺の懐に、だ」

「エリンギー‼ 皆さん‼ 見学料は払わなくて結構です‼」

 オレは籠の中にある金を出していった。

「えっ⁉ タダなの?」

「金は払わなくていいのか」

「なら、返してもらうわ」

 払った人達は全員、金を受け取った。

「ふぎゃああああああ‼」

 エリンギはオレを殴ってきたが、オレは避けて逃げていると、エリンギの籠の中にチャリンと、音が聞こえた。

「ん?」

 籠の中にお金を入れた人物を見ると、石治部さんだ。

「あのー。石治部さん。数珠丸恒次は無料ですよ」

「数珠丸恒次はタダでも、えりんぎちゃんの見学は有料だろう」

「えっ⁉」

「ふにゃ!」

 エリンギは可愛い猫がする様々なポーズをしている。

「え、えりんぎちゃん……何と、愛らしいのだ……」

「いや、可愛いのは外面だけですよ。中身は凶悪です」

 オレが言うと、石治部さんは顔を赤くして、

「馬鹿猫は黙っていろ‼ えりんぎちゃん……」

 石治部さんは、うっとりと魅了されている。

「あーあ」

 石治部さん。騙されているよ。と思っていると、八郎が小声で、

「石田殿は、えりんぎを見ていれば幸せなのだろう。放っておいてもいいだろう」

「そうだな」

 こうして、数珠丸恒次の無料展示会は終わった。

 客はいなくなり、オレ達二人と一匹だけになると、八郎が、

「そう言えば、猫丸。加州金沢住長兵衛藤原清光と大和守安定は、どうするのだ?」

「そうだな……これは…………行って来る」

 オレは二振りを持って、ある場所に出かけて行った。

「ん? どうした? 猫」

 やって来たのは、虎之助さんの屋敷だ。

「虎之助さん。良かったら、受け取ってください」

「何だ。この刀?」

 虎之助さんは二振りの刀を見て、

「なかなか、使い込まれた刀じゃねぇか」

「その様です。その二振り、虎之助さんに送ろうかと……」

「何ぃ⁉ 俺にか⁉」

 虎之助さんは大声で絶叫した。

「あっ、はい。どうぞ」

 虎之助さんは二振りを代わる代わる見ながら、

「聞いた事が無い打刀で、数珠丸恒次ほどではないが、これも名刀だな。いいのか?」

「はい。いいですよ。虎之助さん」

「悪いな。猫」

 虎之助さんは刀を振り回してから、

「猫。これは、大切に使わせてもらう。恩に着るぞ」

 刀を納め、嬉しそうに言った。

「いえ、そんな」

「この打刀の礼は必ず何処かでする」

 虎之助さんはオレの頭を撫でながら言った。

「いいですよ。じゃ」

「あっ‼ おい‼ 猫‼」

 オレは虎之助さんの屋敷を出て、宇喜多屋敷に戻って行った。

「八郎、帰って来たぞ」

 部屋で座っていた八郎は、興味津々な目でオレを見て、

「猫丸、帰って来たか。……あの二振りが無いな。誰に渡したのだ?」

「ああ、虎之助さんに」

「加藤殿にか、それはそれで、いいかもしれないな」

「だろ」

「喜んでいたか?」

「すっげえ、喜んでいたぞ! 虎之助さん」

「そうか。猫丸も贈ったかいがあるものだ」

「そうだな」

「では、猫丸。夕餉にしよう」

「マジ! 夕飯‼」

「ふにゃああ‼」

 オレ達は夕飯を食べに行った。

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