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備前宰相の猫・二巻  作者: 山田忍
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猫と阿呆薬

「さて。ランニングも済んだし、帰るか」

 オレは大坂の町中での早朝ランニングが終わったので、宇喜多屋敷に帰ろうとすると、

「きゃっ!」

「ごめん!」

 オレは、ある女性にぶつかったので謝ると、

「何だ。猫ちゃんか」

「き、如月!」

 オレの目の前に居るのは、白拍子の如月ではないか‼

 如月、弥九郎さんこと小西行長の兄、如清の猶子であり、体は両性具有である事で上様たちのご機嫌を取っているのだが、それ以上に淫乱なのが、玉に瑕だ。

 未来人である如月は、姉ちゃんが来る前から現代的な着物を着ていたが、今では露出度を高くアレンジした着物を着ている。

「猫ちゃん。ボクは葉っぱを集めたのさ」

 如月はぶつかった際、ギザギザの細長い葉っぱを、周りにばらまいた。

「何? この葉っぱ?」

「この葉っぱはね。弥九郎様に使うのさ」

 立ち上がった如月は葉っぱを拾いながら、オレと話している。

「弥九郎さんに⁉」

 この如月は、色々あって弥九郎さんにほれ込んでおり、いつも弥九郎さんに夜這いとかをしているのだが……。

「とにかく、弥九郎様に使うのさ。じゃあ」

「あっ‼ 待てよ‼」

 ウインクして如月は去って行き、オレだけが残された。

「何だよ。たく」

 残されたオレが一人、歩いていると、

「猫殿、どうしました?」

「あっ! 王の兄ちゃん」

 王の兄ちゃんこと……確か、高山右近だったっけ、がオレの前に現れた。

 オレが王の兄ちゃんって呼んでいるのは、月曜の夜中の番組に出ている高槻市のラッパーに似ているから、そう呼んでるワケだ。勿論、当人は知らない。

 王の兄ちゃんは、普通の着物なので安心する。それもそうだよな。姉ちゃんとは、揉めたし。

 けど、オレの事を唯一、未来から来ているって知っている人間なんだよな。

「猫殿、髪に葉がついていますよ」

「えっ⁉」

 王の兄ちゃんがオレの髪に触れ、その葉っぱを取ると、その葉っぱを見つめている。

「……」

「どしたん。王の兄ちゃん?」

「…………」

 王の兄ちゃんは様々な方向から葉っぱを見つめている。

「あのー……」

「猫殿、これは……阿呆薬の元ですね」

「阿呆薬?」

「阿呆薬と言うのは、この大麻の葉を日に乾かし粉末にして、薄茶三服程度用いると、心うつけて阿呆になる薬ですよ」

「そんなにヤバいの?」

「ええ、そうです。ですが、猫殿。何故、猫殿が?」

「ああ、それは、如月にぶつかった時に——」

 オレが王の兄ちゃんに説明すると、

「成程。如月が、ですか……それは、ある種、危険かもしれないですね」

「そうだろ!」

「では、私からアウグスティヌスに言っておきましょう。間に合うかどうか、分かりませんが」

「王の兄ちゃんが言ってくれるのか⁉」

「ええ、言っておきます」

 そう言うと、王の兄ちゃんは早歩きで去った。

「じゃあ、一安心だな」

 オレが、宇喜多屋敷に帰り、しばらくすると、

「猫ちゃん‼ 出て来い‼」

「何だ何だ?」

「何かあったのか?」

 大声で怒鳴られ、八郎と共に玄関に行くと、如月がいた。

「猫ちゃん! てめぇ‼ 何、ボクの計画を台無しにしているんだよ‼」

 如月が大激怒して、オレ達の前に現れた。

「台無しって、何を?」

「猫ちゃんが、弥九郎様にハッパの事を言いやがって‼」

「それって、王の——」

「大体、猫ちゃんだろ‼ ボクの邪魔をするのは‼」

 気付かれていたか、じゃあ、どうすれば……。

「猫ちゃん。このハッパどうしてくれる‼」

 如月は大量の葉っぱをオレの目の前に押し付けながら、怒鳴りつけた。

「葉っぱの事、言われても……」

 如月が持っている大量の葉っぱの処分なんて、どうすればいいんだ?

「とにかく、弥九郎様は、このハッパを使わなかったんだ‼ どうしてくれる‼」

「どうして、って言われても……」

 乾燥させた阿呆薬の葉っぱ……どうしようと言われても、どうしようもない。

 そんな中……。

「ふにゃー」

「エリンギ⁉」

 エリンギが乾燥させた阿呆薬の元を吸っているではないか⁉

「ふにゃー。日本版のヘアーが見たいにゃー」

「エ、エリンギ?」

「何を言っているのだ?」

 葉っぱを、葉巻風にして吸っているエリンギはラリっている様に見える。

「あら、キクラゲ。ハッパを吸ってラリっているわね。大麻には、吸い方があるのに」

 キクラゲとは、如月のエリンギの呼び方だ。この如月もエリンギと同じ時代から来たので、エリンギが喋る事を知っている。

「えっ⁉ 吸い方があるの⁉」

「ええ、吸い方を知らないと、ちっともトベないのよ。それに、大麻は一年以上吸わないと効果無いしね」

「そうなのか⁉」

「つまり、キクラゲは一年以上吸っている常習犯って事ね」

 その言葉にスマホを見て、

「……三時五分、確保」

 大麻を吸っているエリンギを抱きかかえ、首に紐で縛って動けない様にした。

「ふにゃー」

「キクラゲを逮捕って事ね。次はくさよしにするわ」

 如月はその言葉を言って、宇喜多屋敷の外に出た。

「な、何だろ……」

「さあ、わからない事だ」

 それから、夜になって、

「バカ猫‼ これはどういう事だ⁉ 何故、俺は首輪をつけて縛られている⁉」

 元に戻ったエリンギが首輪を外そうと暴れ出した。

「……エリンギ。自分のした事に気付くまで、大人しくしていろ」

「何だと⁉」

 エリンギはオレに対して引っ掻いてきたが、それはオレには届かなかった。

「エリンギ、首輪はしばらく外さないぞ」

 オレは朝まで、暴れるエリンギの見張りをした。

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