猫の救出
「エリンギー‼」
「⁉」
聞きなれた声、その声に南蛮かぶれの手は止まり、
「やめろー‼」
バカ猫が木刀を持ったまま、俺の所に来る。
「如月、エリンギから手を放せ」
「えー?」
バカ猫は手を放せと言ったが、如月はまだ放さない。
「如月はともかく、弥九郎さん。何でエリンギを殺そうとしたんだ⁉」
「……その猫に殺されたお人がおるんや」
「えっ⁉」
「宇喜多左京亮と言う人や、知ってます? 儂、備前におった時、仲良うしていました」
「あ、あの人と⁉」
「坊ちゃまから聞いた時は驚きましたわ。酷い殺され方やったもんやから……後で冷静になって考えてみると、その時、猫さんの猫が備前におったのと猫さんの猫が持つ不思議な力……それで納得いきましたわ」
「エリンギに不思議な力?」
「物を浮かしたり操ったりする力だよ~」
「お前は……あーっ、以前、三日月宗近の時『義元左文字は、渡さないよ~』とか言って、オレの尻尾を握ったヤツ‼」
「あ~、あったね~。そんな事」
「とにかく、エリンギを殺すのはやめてくれ!」
「何でや! その猫は——」
「エリンギはオレにとって大切な仲間なんだ! ここに来て一人の時に居てくれたのは、八郎とエリンギなんだ! エリンギは好き勝手もするし、迷惑もかける! けど、エリンギが居たからオレはやっていけたんだ! 不思議な力を持っていても仲間だ!」
「……」
「……猫さん。猫さんもあの人に酷い目に遭わされたと聞きました。ですが、猫さんの猫の行いも許せまへんが、あの人の行いも良うない事や、猫さんに免じて、今回はやめます」
「弥九郎さん……!」
「せやけど! また誰かを殺したら、今度こそは首を斬るで‼」
「……」
南蛮かぶれはフランベルクを納め、去って行った。
「あ~あ。何かやる気無くした。帰ろ」
チャラ男も去って行った。残っているのは如月だけだ。
「ちっ、惜しかったぜ」
「ふにゃ」
俺は如月に投げられたが、軽やかに着地したと同時に去った。
そして、バカ猫から、
「エリンギ、帰ろう」




