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備前宰相の猫・二巻  作者: 山田忍
15/30

猫の救出

「エリンギー‼」

「⁉」

 聞きなれた声、その声に南蛮かぶれの手は止まり、

「やめろー‼」

 バカ猫が木刀を持ったまま、俺の所に来る。

「如月、エリンギから手を放せ」

「えー?」

 バカ猫は手を放せと言ったが、如月はまだ放さない。

「如月はともかく、弥九郎さん。何でエリンギを殺そうとしたんだ⁉」

「……その猫に殺されたお人がおるんや」

「えっ⁉」

「宇喜多左京亮と言う人や、知ってます? 儂、備前におった時、仲良うしていました」

「あ、あの人と⁉」

「坊ちゃまから聞いた時は驚きましたわ。酷い殺され方やったもんやから……後で冷静になって考えてみると、その時、猫さんの猫が備前におったのと猫さんの猫が持つ不思議な力……それで納得いきましたわ」

「エリンギに不思議な力?」

「物を浮かしたり操ったりする力だよ~」

「お前は……あーっ、以前、三日月宗近の時『義元左文字は、渡さないよ~』とか言って、オレの尻尾を握ったヤツ‼」

「あ~、あったね~。そんな事」

「とにかく、エリンギを殺すのはやめてくれ!」

「何でや! その猫は——」

「エリンギはオレにとって大切な仲間なんだ! ここに来て一人の時に居てくれたのは、八郎とエリンギなんだ! エリンギは好き勝手もするし、迷惑もかける! けど、エリンギが居たからオレはやっていけたんだ! 不思議な力を持っていても仲間だ!」

「……」

「……猫さん。猫さんもあの人に酷い目に遭わされたと聞きました。ですが、猫さんの猫の行いも許せまへんが、あの人の行いも良うない事や、猫さんに免じて、今回はやめます」

「弥九郎さん……!」

「せやけど! また誰かを殺したら、今度こそは首を斬るで‼」

「……」

 南蛮かぶれはフランベルクを納め、去って行った。

「あ~あ。何かやる気無くした。帰ろ」

 チャラ男も去って行った。残っているのは如月だけだ。

「ちっ、惜しかったぜ」

「ふにゃ」

 俺は如月に投げられたが、軽やかに着地したと同時に去った。

 そして、バカ猫から、

「エリンギ、帰ろう」

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