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備前宰相の猫・二巻  作者: 山田忍
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猫と今

「喰らえ‼ 尻尾パタパタアタック‼」

 オレが尻尾でエリンギを叩くと、エリンギは、

「やりやがったな‼ バカ猫‼ 肉球プニプニパンチだ‼」

 猫パンチを仕掛けてきたので、防御していると、

「猫丸、えりんぎ。楽しそうだな。尻尾や肉球があれば、私も混ざりたいのだが」

 オレとエリンギが喧嘩をしていると、八郎がやって来る。

「楽しそうなワケあるか‼ こっちは真剣勝負だぞ‼」

「そうだ! 猫対バカ猫の真剣勝負だ‼ ボンボン‼」

「そうか。楽しそうだったので、つい、じゃれ合っているのかと……」

「「じゃれ合っていない‼」」

「では、何故そうなった?」

「八郎! 聞いてくれ! エリンギがオレの団子を食べたんだ‼」

 オレは八郎に串だけになった団子を見せた。

「えりんぎが全部食べたのか。気にするな。団子は私が買おう」

「いや、いいよ。八郎は買わんでも」

「えりんぎも猫丸も足りないのだろう。ならば、私が団子を買ってもいいだろう」

「いいけどさあ、悪いもん」

「気にするな。買いに行くぞ。店は何処だ?」

 八郎はオレの返事よりも早歩きで玄関に向かった。

「あのな~」

 宇喜多秀家こと、八郎はオレの飼い主でもあり、上様の猶子であり、備前・美作・備中の一部を治める大名だ。

 オレは八郎って呼んでるけど、近衛権少将って言う地位のお偉いさんなんだよな。オレと同い年なのに……。

 鷹狩が趣味で能と茶の湯もこなす美貌と気品のある貴公子だけど……オバケが苦手なのと金遣いが荒いのが欠点だ。

「バカ猫、団子を食うぞ!」

「エリンギ‼ オレの団子食っただろ‼」

 この喋る青灰色の猫の名はエリンギ、オレが呼んでいる名前だ。

 本名はエンリケ……だっけ? いや、ドクタケだっけ……まあ、エリンギでいいや。

 とにかく、このエリンギ、可愛いのは外見だけで、中身は酒・タバコ・女・ギャンブル・金好きの凶悪な猫だ。

 ——凶悪な猫だが、喋る事が出来て、歴史の知識や他の知識も豊富で頼りにはなるから、頭が上がらない。事実、その知識で何回か助けてもらっているし……。

 ちなみに八郎はエリンギが喋る事を知っている。

「猫丸、行くぞ」

「ああ!」

 八郎に言われて、オレも走って追いかけた。

 大坂の町は相変わらず賑やかで人も商売も盛んだ。この町並みを見ていると、やっぱり香川県の日曜日の商店街よりも賑やかで、活気がある。

 ただし……大坂は大坂でも、一五八六年十一月の大坂だが……。

 そもそも、オレは皆からは猫丸って呼ばれているけど、本名は北島翔(きたじまかける)って名前の現代人の中学二年生だ。

 学校の帰り道、全身チェックの怪しい男を助けたら、一五八五年の四国征伐中の讃岐国にタイムスリップさせられたんだ。

 見つかった足軽に殺されそうになってしまい、その時、助けてくれたのが、八郎だった、って事。

 その後、エサ目的でオレについて来たのがエリンギだ。

 オレの左目が青で右目が緑に猫っ毛、猫目に尻尾が生えている事プラス猫耳型翻訳機がある事からオレは猫丸って呼ばれる様になったんだ。

 ちなみに、この猫耳型翻訳機が無いと、この時代の言葉は理解出来ないんだよな。

「大坂……」

 けん玉やヨーヨー、独楽で遊ぶ子供達を見ていると、穏やかな気持ちになる。

「そして……」

 桜色や牡丹色の和風なロリータや王子スタイルの男女も見受けられる。

「姉ちゃん……」

 本来なら着物は小袖とかのはずが、ワケあってオレの姉ちゃんがタイムスリップした事によって、ミシンが作られ、ゴシックやロリータの服の作り方が、この時代の大坂に広まってしまい、大坂の町に居る上流階級の住民に広まってしまったのだ。

「猫丸、どうした。行かないのか?」

 艶やかな黒髪をなびかせた八郎は上機嫌に笑い、早歩きになった。

「ああ! 行くよ‼」

 オレが八郎に追いつくと、目の前には団子屋があった。

「団子を十本」

「はい!」

 出来立ての団子が八郎の手にやって来た。

「団子!」

「ふにゃ!」

「猫丸、えりんぎ、喧嘩せずに分けるのだぞ」

「わかった!」

「俺が九本でバカ猫が一本、それで喧嘩にならないだろ」

「えりんぎ……それは駄目だ。えりんぎと猫丸で五本ずつだ」

「何⁉」

 半分に分けると聞いたエリンギは不機嫌になったが、

「だが、団子を食べる前に大坂城に寄らないか? お豪に会いたいのだ——」

「行くぞ‼」

 お豪ちゃんに会えると聞くと、一気に上機嫌になった。

「エリンギ……」

「では、行くぞ。大坂城に」

 大坂城に行くと、相変わらず工事中だ。

 工事中の所を抜けて、大坂城奥御殿にやって来た。

「お豪、居るか?」

「何でしょうか? お兄様!」

 オレ達の元に来たのは、ピンク色のフリフリのロリータを身に纏ったお豪ちゃんだ。

 大坂のお姫様で、ロリータで無い女の子はいないからな。

「お豪、団子を買って来たのだが、食べるか?」

「まあ! 美味しそうな団子でする‼ 食べます‼」

 お豪ちゃんは笑って団子を受け取った。

「そうか。笑って受け取ると嬉しい」

「お兄様、ととさまとかかさまの分のありますか?」

「父上の分と母上の分も用意している。お豪、今から献上しようと思う」

「そうですか‼ ととさまもかかさまも喜びます‼」

「ああ、今から行って来る」

 そして、大坂城表御殿御対面所にて、

「おお! 八郎か。どうした?」

 上様と北政所様がいる。上様は藤原改め豊臣に変えたって、八郎が言っていた。

 でも、上様、豊臣秀吉になるんだよな。どっかで聞いた事あるような無いような、まあいいか。

「父上、母上。団子を買ってきました。受け取ってください」

「おおっ! 団子か。美味そうだな!」

「本当、美味しそうね」

 上様も北政所様も嬉しそうに団子を受け取り、食べている。

 北政所様の着物は普通に小袖だが、上様の着物はゴシック化している。完全に姉ちゃん悪影響を受けている。

「この団子、美味しいわね」

「ありがとうございます! 北政所様‼」

「団子は美味だな。どの店だ?」

「団子は——」

 上様が団子を聞くと、八郎が団子を売っている店を紹介する。

「そうか。では、行くぞ」

 団子を上様は買いに行こうとする。

「わかりました。では」

 八郎はその店を案内する。

「行って来るぞ」

 上様と八郎は外に出た。

「猫丸! 行くぞ‼」

「ああ!」

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