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07話 旅立ち




 二ヶ月近く拠点としていた森とその付近。

 めぼしい魔獣も倒し、その主も撃破出来た。……と言っても別に殲滅してはいないけどね。レベリングって言っても、ここいらの魔獣達に恨みがある訳じゃない。基本的に食材の調達と、喧嘩を売られなきゃ殺しはしないよ。


 ならば、遂に旅立ちの時だろう。

 このままのんびりとスローライフを送るというのも選択肢の一つではあるが、どうせなら世界を回ってみたいのである。

 それに、ドラ子達ももっと強くしたいしな。もし知的生命体が存在したとして、それらと関わるかどうかはおいおい考えるとして、やはり早いうちにこの世界がどういうものなのか理解しておくべきだろう。


 ドラ子達にその説明をしたところ、三竜ともキャッキャッと喜んでくれた。どうも、旅というものが楽しみらしい。

 という事で、いざ旅立とう……という段階になって、ちょっとした問題が起こった。


「がうーっ!」

「ぎゅうぅっ!」

「ぐぐぅっ!」


 三竜は睨み合い、威嚇しあっている。

 なんでまたこんな事になったかと言うと………単に、誰が俺を背に乗せるかで意見が割れ、喧嘩しているだけだ。

 普段は弟想い、妹想いの兄さん姉さんも、これだけは譲れないものがあるのか、ガチで喧嘩しようかという姿勢のようだ。

 ……慕われているというのは嬉しいのだが、実に面倒くさい。


 そのままガチバトルに発展するかと思われたが、その前に俺はふわっと浮かび上がり……


『じゃあ、先に行っているからな。遅れるなよ』


 とだけ言い残して、彼方へビュンと飛び去った。前にも説明したが、俺はその気になればドラ子達よりも早く飛ぶ事が可能なのである。


「が、がうーっ!」

「ぎゅうぅぅぅっ!」

「ぐぐぐぅーっ!」


 背後から悲鳴の如き泣き声が響くが、今は無視。これも教育である。




◆◆◆




 大体山を一つ分越えたあたりで待っていると、ドラ子達が慌てて追いかけてきた。

 俺の姿を確認すると、獲物を捉えたかの如きスピードで突進してきた。肉体があったら大怪我レベルである。

 でも、三匹とも涙を流して謝っているようなので、今は叱るよりも頭を撫でて慰めてやった。

 でかくなっても、まだまだ子供なんだから仕方ない。


 背に乗る順番であるが、とりあえずケルヴィンに跨り、その後は休憩ごとに交代する決まりになった。

 自分で飛ぶのと違って、意識を集中する必要もないから外の景色に集中できる。


 既に自分達が拠点としていた所がどういう場所にあるのかは、二ヶ月前に確認していたが、こうして見るとやはりとんでもない場所だったのだと実感できる。


 ……ここは浮島だったのだ。


 空に浮かぶ島……というよりはちょっとした国ぐらいの大きさであった。

 遥か眼下に陸地があり、おおよそ5千メートルはあるんじゃないかな。これぐらいの高さなら、下からでもこの島の存在は確認できないかもしれない。


 それにしても、これだけの巨大な岩の塊が浮いているのだから、異世界ってすげーなと思うしかない。


『ようし、じゃあ下界に降りるとするか』


 俺達は今まで、ある意味で天国のような場所に居たという事なんだろう。まぁ普通にイメージする天国とは全く違う場所だったけど、天の国という意味なら正しい。

 結局あの土地には知的生命体が居たような痕跡は無かったし、あそこへ飛ばされたのも夢のドラゴンさんの力なのかねぇ。


 その辺の思惑は置いておくとして、いよいよ下界である。

 眼下には、広大に広がる陸地。ここから見た限りだと、平原と山と森しか見当たらない。集落やなんかは見当たらないが、何事も降りてみないと分からない。


『よし、ダイブするぞ!!』

「がう!!」「きゅい!!」「ぐう!!」


 俺達はそのままスカイダイビングの要領で空中へと身を投げたのだった。

 重力に従って風を切る感覚―――は、無い。

 幽霊である俺にとって、身体の重みというものは存在しないから、そのまま空浮いている事も可能だ。でも、俺はまだ幽霊として経験が浅いから、まだまだ人間だった頃の法則に従ってしまう。

 つまり、物体は下に向かって落ちるもの。

 意識さえしなければ、俺の身体はまだまだ人間だったころのように下に向かって落ちるのである。


「がうー!」

「きゅいー!」

「ぐうー!」


 翼を折りたたんで空を飛ばず、自由落下に身を任せるという、普段はあまりやらない行為にドラ子達も愉しんでいる様子だ。

 スカイダイビングを楽しむ若者達のように、身体をくるくると回転させたり、すいすいーと泳ぐように空の散歩を味わっている。

 ドラゴンらしからぬ行動であるが、別に変な癖にならなかったらいいや。


 そうしていると、次第に陸地が近づいてきた。

 いい加減、飛ぶ準備をした方が良いだろう。俺はともかく、ドラ子達はこのまま落ちたら死ぬからな。


『む!』


 ドラ子達に指示を出そうとしたら、この二ヶ月の間に鍛え備わった俺の敵意察知能力が反応する。


『迎撃準備!』


 俺の言葉に、今まで遊んでいたドラ子達の目の色が変わる。翼を出現させて空気抵抗を加え、ゆっくりと落下スピードを殺してそのまま宙に制止する。


 すると、それは現れた。


 体長は5メートル程の怪鳥。何より特徴的なのは、巨大な4枚の翼に額に生えた一本の角。

 馬鹿でかい怪鳥には浮島においても遭遇した事があったが、それよりもでかい!


名称:???

性別:♂

種族:魔獣

   ケツァルコアトル

HP:2000/2000

MP:280/300

筋力:C+

魔力:C

耐久:C

敏捷:C++


 急いでステータスを確認すると、うちの子達よりも平均値が高かった。

 平均C以上かよ!

 これ、結構レベル高い魔獣なんじゃないの? それとも、このレベルが下界はうちじゃうじゃ居るの?


 とにかく、ケツァルコアトルはグエエエッという鳴き声と共にうちの子達を狙うべくこちらに突進する。

 ……明らかに友好的な態度じゃねえよな。いちなり敵に遭遇というのは残念であるが、降りかかる火の粉は払うべし!


『ケヴィ、セラ、ソロ! やっちまえ!!』

「ガアァッ!!」

「キュイッ!!」

「グオォッ!!」


 俺の指示にドラ子達は散開。

 三方向からそれぞれに攻撃を仕掛けた。




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