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05話 ちびドラゴン×3




 ピキピキという音と共に、卵にヒビが入る。

 すると、まず右端の卵がバリンと音を立てて砕け散った。


「がうー!!」


 そんな声と共に中からは、真っ赤な鱗を持つちびドラゴンが飛び出してきたのだった。

 最初はよたよたと歩いていたが、次第に動きにも慣れ、俺を視認すると子犬のように駆け寄って来た。そして、初めて声を出したせいか喉に違和感があったのか、けふっと咳き込む。その時に口から小さな炎が一瞬だけ吹き出た。


 ベビーファイヤードラゴンの誕生である。


『よし、お前が一番お兄さんだ。ケルヴィンと名付けよう。長兄として、責任をもって立派に育つんだぞ』

「がうー!!」


 短い両腕を掲げ、頑張るぞ! とばかりに吼える。


 次に飛び出してきたのは、ケルヴィンとは別に真っ白な鱗……いや、羽毛のようなもので包まれた小鳥のようなドラゴンだった。


「ぴいぃぃ!!」


 鳴き声も鳥みたいだな。

 でも、真っ白い羽は美しく、顔もシュッとしている感があるから将来的に美形になりそうだな。……ドラゴンの美形云々があるのかは分からんが。

 ……でも、なんか顔立ちがケルヴィンに比べると女の子っぽいな。


『名前決める前に聞くけど、お前って女の子?』

「ぴぃ?」


 愛らしく首を傾げる白い子。

 俺は近づいてきた白い子をこてんと転ばせると、ついてるかついてないか股の方を確認する。


「きゅん!」


 なんかじたばたと暴れているが、大事な事なのだ。男なのに女の子と認識して育てていたら、将来的に困るだろう。しかし、ドラゴンの性別の違いというのは難しい。そもそもどこについてるかとか分かんねぇ。


 すると、俺の手をびしっとケルヴィンが叩く。


「がうー!」


 そちらに視線を向けると、何やら憤慨しているようだ。そして、トントンと自分の頭を叩く。


 ……え? なに、お前は馬鹿かとか言いたいの?

 ん、違う?


 ああ! ステータスか! そういやそんな便利機能があったの忘れてた。

 急いで白い子のステータスを確認する。


名称:???

性別:♀

種族:竜族

   ベビーエアロドラゴン

HP:300/300

MP:50/50

筋力:E

魔力:D+

耐久:E

敏捷:D+


 おや、今まで???で表示されていた部分がいくつかはっきりと見えるようになったな。

 そして、このステータスによるとやっぱり女の子のようだ。


「ぴぃっ!」


 見れば、何やら恥ずかしそうに白い子が顔を伏せている。

 うーむ。考えてみれば赤ん坊と言っても女の子の股を直接確認とか、とんでもねぇ事をやったのね。


『ごめんね。悪かった悪かった。君の名前は、セラフェイム。長女として、他の兄弟をしっかり纏めてくれ』

「ぴぃぃっ!!」


 名前を付けると、セラフェイムは嬉しそうにピョンピョンと跳ねた。

 そして、ステータス画面も更新され、名称の欄にセラフェイムと表示される。


 試しにケルヴィンのステータスを確認。

 

名称:ケルヴィン

性別:♂

種族:竜族

   ベビーファイヤードラゴン

HP:350/350

MP:50/50

筋力:D

魔力:D

耐久:D

敏捷:E+


 こっちは男の子みたいね。

 なるほど、ファイヤードラゴンの場合は筋力がと耐久がちょっとアップするのね。


 さて、残りの子は?


 ふと最後の卵に視線を向けると、ピキピキとヒビは入っているのだが、そこから先が続かない。

 他のドラゴン達と一緒に首を傾げてみるが、一分経っても二分経ってもそこからの変化は無かった。


 俺達は顔を見合わせると、頷き合ってソロソロと最後の卵へと近寄る。

 そして、そのヒビの入った部分に目を向けると、そこからこちらを覗いていたらしいつぶらな瞳と目がバッチリと合う。そして慌てて逸らされた。

 ……どうも、生まれてはいるみたい。

 でも臆病な性格なのか、ちっとも卵から出ようとしないな。


 試しにステータスを確認してみる。


名称:???

性別:♂

種族:竜族

   ベビーシードラゴン

HP:300/300

MP:50/50

筋力:E+

魔力:D-

耐久:E

敏捷:D


 うむ。やっぱり生まれている。

 しかし、生まれて早々に引きこもりってのはこりゃどうすりゃいいんだ。


「がううう!!」

「ぴぃぴぃぴぃ!!」


 二竜が早く出てこいとばかりにその場でジャンプしてせっつく。


 すると、その声に反応してかピキピキと卵のヒビが大きくなり、やがて完全に割れた。

 中から現れたのは、他の二竜よりも胴が長く翼も短い青い鱗のドラゴンだった。

 ベビーシードラゴン。

 いわゆる東洋龍タイプのドラゴンって事だな。


『よし、お前の名前はソロネだ。お兄さんとお姉さんのいう事を聞いて、しっかり育つんだぞ』

「ぐ、ぐぅぅぅ」


 ソロネと名付けたちびドラゴンは、気弱にそう答える。

 やれやれ、元気いっぱいの子達でも大変だが、こういったタイプも交じっているとなるとまた大変だ。


 まぁ、何はともあれ無事に生まれたんだ。

 頑張って育ててみるとしましょうか。


 ハッピーバースデー、ケルヴィン、セラフェイム、ソロネ!




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