04話 ドラゴン生まれる
……おはようございます。
朝日と共に起床。実に身体の良い事です。
……幽霊なんすけどね。
とりあえず、何事も無く夜は過ごせたみたい。
卵ーズも無事みたいだ。
さて、とりあえずの問題も解決できたので、これからの問題について考えようか。
勿論、これからどうするのかと、この卵たちをどうするかって事だ。
ただ、卵を放置する気はさらさら無い。
いくら押し付けられただけで、面倒を見る義務は無いとしても、こいつ等を放っておくという選択肢は無い。一応、この世界において唯一の繋がりみたいなもんだからな。
それに、このまま放置して何かあったら、後味も悪いし夢見も悪いだろう。……幽霊だけど。
だが、面倒を見るにしても問題が山のようにある。
今の俺は幽霊なのである。
幽霊がどうやって赤子の面倒を見られるというのか。
そもそも、どうやって孵化させられるというのか。
卵の孵化ってのは、暖めたりするものだろう? 体温の無い幽霊にそんな芸当が出来る筈もない。じゃあどうやって暖めたらいいんじゃ。
と、卵と向かい合ってにらめっこしていると、ふと視界に変化が現れた。
何か目の病気にでもなったのか? と、幽霊ならばあり得ない事に戸惑いつつも目を擦る。
すると、何やら空中に文字のようなものが浮かびだした。
いや、文字とは少し違う。頭の中に言葉が浮かぶ感じだ。だが、何となく意味は理解できる。要は、今現在俺が見ている物の状態を説明しているんだろうが……表現が難しいな。もっと分かりやすく、メニュー画面とかコマンド表示画面とかで現してくれたら嬉しいのに。
……すると、急に脳内のイメージが鮮明になり、ハッキリとコマンド表示画面が俺の目の前に現れた。
再びゴシゴシと目を擦ってみるが、そのコマンド表示画面は消えはしない。
……これって、マジで存在しているもんなんだろうか?
いや、自分の存在さえあやふやなんだ。深く考えるのは今は止めておこう。
とりあえず、そのコマンド画面をよく見てみる。
対象:ドラゴンの卵
状態:孵化寸前
耐久:10/10
???
???
耐久値の下にもあるっぽいんだけど、よく読めないな。
まぁいいや。とりあえず今はこれをどう判断するかだな。
……なんでこんなゲームみたいなステータス画面みたいなもんが見えるんだか。これって、この卵の状態って事で良いんだよな。
……孵化寸前ってあるけど、どうすんだこれ。
生まれる?
生まれるの?
マジでドラゴン生まれるの?
俺の目の前で?
……これは想定していなかった。いや、考えが甘かった。卵を育てるってのは、そういう事なんだよな。ただ、預かって早々に生まれるってどういう事なの。
あん?
まだ何か確認できる文字があるな。
“進化先”
そこから矢印が出て、いくつかの候補がリストアップされていた。
ベビードラゴン
ベビーファイヤードラゴン
ベビーエアロドラゴン
ベビーシードラゴン
ベビーランドドラゴン
要は、この中のどれかになるよー……とかそういう事?
名前から察するに、普通の赤ん坊ドラゴンと、火水風土の四属性に特化したドラゴンって事か。
これって今俺が視線を向けている卵のステータスという事なんだろうか。
ならば……と、他の卵に視線を向けると、一旦ステータス画面が消え、また新たな画面が表示される。
書かれている項目は全く同じ。
進化先のリストも同じであった。
『……よもや、俺にどれに進化するのか選べと言う事なのか?』
思わずそう呟くと、まるで正解! とばかりに卵ーズが上下に弾む。
……マジっすか。
子供の将来に関わる事案を、今ここで決めろとおっしゃるか。
キツイなー。
初っ端からキツイわ―。
普通に考えたら、属性に特化している方が有利ではあるよね。
でも、オーソドックスタイプはゲームで言うと後々オールマイティタイプに進化できるとか、そういう事もありうるかもだ。
それに、この中に光とか闇系の属性無いじゃんよ。って事は、ノーマルタイプからそちらに派生すると言う可能性も……。
ああくそ、考え出したらキリが無い。
攻略本が欲しい。
もしくはネットで攻略サイトを検索したい。
どうなんの?
こっから先の進化先とかどうなんの?
と思ってリストを睨んでみるのだが、そこから先が表示される事は無かった。
……という事は、やはり直感で選ばなきゃいけないのね。
どれ選んでも後々後悔しそうだなぁ。
こうなったら、目を瞑って適当に選ぶか。運に身を任せれば、後々後悔のしようもないだろう。
何やらワクワクしている様子の卵ーズを無視し、俺は目を瞑った。
そして、俺が選んだのは――――――