表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

第0話 死にたい


『母さんの…分まで』………







耐えきれない。


死にたい 死にたい 死にたい 死にたい 死にたい 死にたい 死にたい 死にたい 死にたい 死にたい 死にたい死にたい死にたい死にたいっ!


頭の中は『死にたい』という言葉で埋め尽くされて下準備は完了。あとは…

この橋を飛び降りるという、『勇気』という名のスパイスを加えるのみだ。それなのに…


「くそっ…!足が…震えてっ!!」


『勇気』が見つからない。ないと完成しないのに、どうしても見つけられない。さっきまで手元にあったのに、綺麗さっぱり無くなってしまっている。


「なんで…なんでなんだよ!…死にたいのに…なんで死ねないんだよっ!?」


そんな理由なんてもう分かっている。



「死にたくないなぁ…」



この一言が『死にたい』という気持ちをを全て弾き飛ばし、『勇気』を持ち去ってしまう。だからもう、『死にたい』なんて口だけで、本当は死にたくない。だけど、死にたい。


「本当に俺ってクズだ」


立っていた手すりから高くジャンプして飛び降り、着地に失敗する。


「………っ!」


(痛い。俺は生きている。)

そして、自然と涙がこぼれる。


「まだ…母さんに会えないんだなぁ」


母さんは3ヶ月前に亡くなり、その時から今まで寂しく1人で生きてきたが、耐えきれなくなって、今日自殺を試みた。俺は死後の世界を信じない人間だったのに、今日いきなり母さんに会えると思ってしまったんだ。


「またこの道を歩かなきゃいかんのかよ…」


家に帰るにはこの道を通らなければならなかった。この道にはたくさんの思い出がある、そう思ってさっきさよならを告げたのに。

俺は恥ずかしすぎて赤面してしまう。



気付いたら家の前に立っていた。ドアに手を触れてみると、頭の中に母さんとの思い出が流れてくる。

母さんは笑顔の素敵な人だった。いつも俺に笑顔で『おかえり』と言ってくれた。でも、『おかえり』と言ってくれる母さんはもういない。


母さんとの日常はもう帰ってこない。

また、ぼろぼろと涙を流す。


「こんなに泣いてたら、母さんに怒られちゃうな…」


腕でごしごしと涙を拭ってから、ドアを開ける。




「おかえりなさぁーい!」






俺の家の玄関に、少女が立っていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ