格の違い
実は黙って俺の淹れたコーヒーを一口飲み静かにカップを机においた。
その後じいちゃんは二人のコーヒーを飲み比べて言った。
「こりゃ誰が飲んでも一目瞭然じゃな。拓海、それでいいか?」
「、、、、ああ。」
くそっ、認めたくはないが誰が見ても俺の負けだ。
全国にはこんなやつがうようよいるのかよ、、。
とても悔しかったが一つ腑に落ちないことがあった。
「ところで、この豆は何をブレンドしたんだ?味わったことのないような感じだったが。」
「ブレンド?何言ってるの?俺が使ったのはコレだ。」
実がそう言いながら見せてきたのは驚きの物だった。
「インスタント、、コーヒー?」
思わず口に出してしまった。
「正解。」
「ちょっと待て、嘘はやめろよ。そんなんでこの風味がでるはずがない!」
俺は声を荒げてしまった。
「どうしてすぐそう決めつける?このコーヒーが美味しくないと思っているのはお前に技術がないからだ。
どんな豆であれそれにあったお湯の温度、抽出時間、分量をちゃんとすれば美味しいものはいくらでも作れる。たとえ加工されたインスタントコーヒーでさえお前レベルが淹れたコーヒーよりおいしいコーヒーは
できる。」
格の違いを見せつけるかのような言い方だった。
「も、もう一回だ!もう一回勝負すれば、、」
「時間の無駄だ。それにこれ以上はお前に淹れられる豆がかわいそうだ。」
俺のみっともない発言に実は言葉を重ねてきた。
「くそっ、、、、。」
何も言い返すことができない。
これが世界第6位か、、、、まだコーヒーには俺の知らないことがやまほどあるってわけか。
このままぐちぐちしてるわけにもいかねーな。
「じゃあ僕はもう帰りますね。
また僕のコーヒーが飲みたくなったらお店に来てください。まぁ今回のようにインスタントコーヒーではなく、ちゃんとした豆を使ってますんで少々値は張りますけどね。」
実はくるりと背をむけながら言ってきた。
「おお、すまんな、忙しいときに。」
重松は手を振りながら見送った。
「では。」
そう言って佐実は帰っていった。
「じいちゃん、、俺は今まで自分の淹れたコーヒーは最高だって思ってた。けどそれが間違ってたって思い知らされたよ。
俺、研修行ってくるよ。もっと世界のコーヒーを知ってみたい。」
「良い目だ。行ってもまれて来い!」
重松は驚きながらも真剣に言ってくれた。
こうして俺の世界への挑戦が始まった。




