コーヒーの世界
「こんにちわー!今日は何にします?」
「今日も元気いいね!いつものたのむよ。」
「はいよ!少々お待ちくださいね。」
なにげない店員と客の会話が聞こえる。
店内には香ばしく濃厚な香りが漂う。
ここは都心から少し外れた場所にある個人経営カフェ『黒鶴』。
そこの店員である俺・亀本拓海(かめもとたくみ・18歳)は絶妙な時間を見計らってコーヒーを入れる。
この世はカフェ時代。町のいたるところにカフェ、喫茶店があり、コーヒー協会により技術力、接客、すべてを審査され上位100名に順位が与えられ、ランキング入りした店員がいるチェーン店や個人経営カフェは瞬く間に世界中に知れ渡る。ランキング入りはすべての店員の憧れだ。
「はい、お待たせしました。オリジナルブレンドコーヒーです。」
俺はコーヒーが入ったマグカップを持って行った。
お客様の田中さんは香りを嗅いで一口飲む。
「ん〜〜、やっぱりたくみくんのいれるコーヒーが一番だね。この調子だとランキング入りも夢じゃないんじゃない?」
「はははっ、僕にはまだムリですよー。」
田中さんは続けざまに質問してきた。
「ところで今度の大会には出るのかい?」
「んーー、、、今のところ出るつもりはないですね、僕はお客さんが喜んでもらえるならそれだけで嬉しいですから。」
「嬉しいこと言ってくれるねー。」
田中さんは少しにやけながら言った。
大会とは、カフェ、喫茶店の店員が集まり己の技術力を競う一年に一回の大きな大会、通称『コーヒーフェス』。
この大会で優勝すればコーヒーマスターの称号を与えられコーヒー界では圧倒的カリスマになれランキング入りも確定される。
もちろんプロ、現コーヒーランカーも参加するので全世界が注目する。
しかし優勝するのはそんなに簡単なことではない。
昨年のエントリー数は475233人。
その中で優勝したのが今のコーヒーランキング1位の人だ。
そんなある日、おじいちゃんであり店長でもある亀本重松に呼ばれた拓海。
「んー、、なんだろう。なにかやらかしたかな、、、。」
俺はそう言いながらおじいちゃんのところに行く。
「おお、きたか。」
白髪のひげを触りながら重松は言った。
「なにかあった?」
俺は恐る恐る尋ねた。
「お前今度のコーヒーフェスで優勝してこい。」
「、、、、はあぁぁぁぁぁぁぁあ???
何言ってんの??」
俺はあまりの言葉に大声で叫んでしまった。
「そんな大きな声出すな、うるさいじゃろ。」
「そんなこと出来るわけないだろ!」
じいちゃんの奴何考えてんだ!?
「うん、そうじゃな、さすがにいきなりは難しいだろうと思ってな、とりあえず研修に行ってこい。」
重松はまるであたりまえのことのように言ってきた。
「研修?ふざけんなよ、俺はこどもの頃じいちゃんに教わって以来ずっと最前線の現場で働いてきたんだぜ?今さらなにを学ぶ必要があるんだよ!」
「うーむ、やっぱりか。そう言うかと思ってよんでおいて正解じゃったな。おーい、こっち来てくれ!」
なんだ??
「まったく、、、こっちの身にもなってくださいよ。まぁ重松さんの頼みなら断れないですけどね。」
1人の青年がだるそうに部屋の中に入ってくる
「おお、すまんすまん。今日だけじゃ。」
「、、、誰?」
俺は見たことのない人物の登場に頭が少し真っ白になった。
「お前は本当に自分のこと以外に興味がないな。コーヒーランカーの顔も知らんのか?」
「、、一位くらいしか。」
俺は小声で答えた。
「まったくあきれるわい。こいつはランキング6位の佐田実、テレビや雑誌に引っ張りだこなのにわざわざ来てもらったんじゃぞ?どっかで見たことないか?せめて一桁ランカーくらいは勉強しとけっ!」
「6位、、、、、、、。」
あまりの衝撃差に俺は言葉を失った。