辻橋女子高等学校26 ― ムニュムニュクッション
何を言ってるんですかこの人は。
え、なに、これおっぱいだったの?
え? 知らなかったー。全然知らなかったー。
ちょっとムニュムニュレベルの高いクッションか何かかと思ってたわー。超そう思ってた。うん。鬼そう思ってたわー。うんうん。
別に?
ちょっと気持ちよかったりしたから自分からムニュムニュしに行ってたとか、そんなこと全然なぃしぃ? 俺はただうちの長女にヘッドロックされて連れて行かれてるだけだ。
そう。ただそれだけなんだから。
「返事がないということはヤッパリ大好きなのね。お姉ちゃんのおっぱい。もっとムニュムニュしていいのよ」
「え……あ、はっ? 何を言って―――」
「はーい。ここに座ってくださーぃ」
どこから持ってきたのか、廊下に椅子があった。
言われるがままに座ると、妃乃里は自分の部屋から化粧道具を持って来た。
「ほら、顔を上げなさ~い」
「いやだからいいっつてんだ……ぬぉあ」
妃乃里が手を顎に当てて強引に顔を持ち上げ、俺と視線を合わせる。その時見えた妃乃里の顔はすごく笑顔だった。
「じゃあね、やっていくわよ~。まずは目のあたりかなぁ」
妃乃里は手際よくいろいろ塗りたくってくる。
「あの頃はあたしはそんなに塗ってなかったからねえ……でもまあここをもっと塗ればかなり私寄りになるか……ふむふむ」
「あのー……もういいんじゃない? けばくなるんじゃない? ねえ」
「ん~……ケバくはないけど……まぁそうね~。……こんな感じかな?」
目を開けると俺をまじまじと見る妃乃里の顔があり、すぐに「うん、おっけ~! ばっちりよ」と満面の笑みになった。
「はい、立って立って~。おっきして~」
おっき……。
俺を立たせると妃乃里は椅子と化粧道具を持って自分の部屋に入って行った。
……ああ。
これが世間がいう、「おもちゃにされる」というやつか。きっと弟あるあるなんだろうな。姉の満足感を満たすために弟が体を張り心を張り時間を張り……せつねぇなぁ。
灌漑に更けっていると、後ろからガチャと扉の開く音がした。
「奏陽、お腹がすいた」




