辻橋女子高等学校25 ― エッチな目は存在しない。物理的な意味で。
まったくも~しょうがないな~みたいな目線を送りながら、妃乃里はそう言った。
まず一つ。エッチな目の定義を教えてもらいたい。
二つ。今の目がエッチな目だというのであれば、俺は日常茶飯事でエッチな目を露出させているということになり、エッチな目というのだからそれはエッチなものの類なわけであって、公然わいせつ罪になりかねないわけであり、それはそれは超やばいわけだ。
そして三つ。エッチな目=俺というイコール関係を今すぐ撤廃していただきたい。
「向けてねえよ。てかもっと肌をしまえよ。いくら家の中と言ってもそれはどうかとおもうぞ」
俺の目は決してエッチな目ではない。少なくとも気持ちはどちらかと言えば無心に近い。そんな健全極まった瞳をエッチだと言うのは、お前のみだらな格好によってここの空気がエッチ化して、その環境が俺の目をエッチな目に仕立て上げてんだよ。つまり妃乃里のせい以外の何物でもない。
「お洋服なんて着てたら通気性が悪いじゃないの。お肌に良くないわ~」
あーいえばこう言う。
じゃあなんだ。一生裸族としていきていくつもりか?
……え、大丈夫? それ。絶対貰い手ないよね。ダーリン見つからないやつだよね。いやだってこんな格好で宅急便とか受け取れないよね。
ん? いやどうなんだろう。家の中なら公然わいせつ罪とかには当たらないのか? いやなんにせよプラスに働くことはないだろう。
「でも知らなかったわ~。奏ちゃんがまさか私に憧れていたなんて」
「憧れる?」
「だってそうでしょ~? 憧れてるから私になってるんでしょ~?」
「いや違うって」
「でもなんで昔の私なの? なんで今の私じゃないの? 今の私じゃダメなの? 魅力がないの?」
「いやだから違うっつの。違うの。いろいろと。だから話しながら布面積減らしていくのやめて」
この露出狂変態女め。
なぜそうすぐに肌を見せたがるんだ。
「そんなに恥ずかしがらなくていいじゃな~い。だってその姿、誰がどう見ても昔の私よ? 証人がほしいなら街に出てごらんなさい。きっと誰かしらに声をかけられるから」
確かにあの頃、生徒会長をしていたときは、他校や地域のいろんな団体と絡んでたようだからな。妃乃里の顔の広さは相当なものがあるだろう。
もしかして今こんなギャル化したのは、街を歩きやすくするためとか……?
「でもそうねぇ〜。う〜ん、ちょっとまだあれよね~。言うならば私寄りの結奈ちゃん、もっと言えば結奈ちゃんよりの奏ちゃんっていう感じかしら」
「いや当たり前だし。俺的には誰にも寄ってるつもりはねーよ」
「なにそんなつんけんしてるのよ〜。せっかく面白そうな感じになってるのに〜」
だからだよ! お前のそのニヤけた顔が俺の心を尖らせるんだ!
「ほら、もっとお姉ちゃん寄りにしてあげるからこっちに来なさいよ。お化粧してあげるぅ~」
右腕でヘッドロックをかけて俺の頭を自分の右胸辺りに押し付ける。
「寄せるってこういう寄せるかよ!」
ってかどうしてうちの姉たちはこんなにもパワーがあるんだ!!! 全然抜けらんねぇぞ!
「だってこうでもしないと奏ちゃん逃げるじゃなぁい。それに、お姉ちゃんのおっぱい好きでしょ?」




