表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/111

辻橋女子高等学校23 ― 姉としての責務

 ん?




 私にできること?




 なんだ私にできることって。


 今の言い方だと、その私にできることとやらをプレイしていたということだよな。




 沙紀は崩れ落ちた。




 俺が床に顎をつけて伸びている状況で向かい合う形で崩れ落ちた。


 本来であれば、正面に太腿と股で逆Vの字が視界に入るのであろうが、水色のパンツがそれを遮り、上から見ればAの字になっていることであろう。




 正直、さっきからひざ上くらいに存在しているこの水色パンツが、本来穿いていたはずのパンツなのか、それとも二枚目なのか―――その謎が、今俺の視界を遮っているものをめくればわかるのだが、手がしびれて動かない。


 それは置いておくとして……





 さきの頭を思い出す。


 さきの両手を思い出す。


 さきの胸元を思い出す。


 さきの太腿を思い出す。




 全てに共通してあったものは、沙紀の色とりどりのパンツであった。




 




「犯罪者になる前に……姉としてできる事を……姉として……私のパンツならいくらでもあげるから……履いていいから……」





 …………そっか。


 そういうことか。


 パンツを穿き替えさせたかったのか。


 自分のパンツに…………。


 だからあんな自らパンツ掛け器になって俺にアピールしてたのか。自分のパンツを。




 そんなの……言ってくれればよかったのに。履き替えるよ。普通に。言ってくれれば。


 別にクマウサパンツを履きたくて履いているわけじゃないんだ。


 履き替えるに決まってるのに……こんなの。




 なんかシュンとしてしまったな。姉の不器用過ぎるアプローチ……いつもの自分のカラーにはない行動をしてまで俺を心配してくれたんだな……と。




 俺は気づかなかった。気づいてあげられなかった。姉の気持ち。俺のことを大切に思ってくれるその優しさに気づけなかった。変なことをしているなとは思っていた。でも、昨夜のこともあったからその影響もあるのかもしれないし、そういうことをしたい年頃なのかもしれないし、いろいろ考えてしまって一番大切なところを気づけなかった。沙紀なりの不器用極まるその行動の真意を、俺は察することができなかった。




 体が少しは言うことを聞くようになり、上体を起こして後ろにのけぞる形であぐらをかいた。




 あの冷徹な次女、沙紀が今にも涙を流さんとばかりに目の中で涙をためていた。


 我慢しているようにも見えなくはない。


 涙に慣れていないように見えなくもない。


 なんせ、沙紀がないたところなど、軽く記憶を思い返してみてもそんな過去は出てこない。






「……俺の話を信じてほしい。パンツは……履き替えるから……」




 作り話を信じてほしいなんていうのは、この状況なだけに本当につらかったが、それはしょうがないことだと割り切った。


 俺は沙紀の心を落ち着かせるように、優しく言った。




「…………」




「…………」


 


「生パンツが良ければやるぞ。暖かくしておいたから」




「いやいいです。死パンツでいいです。冷たいキンキンに冷えてやがるパンツでいいです」




「……なんだ。そうか。ちぇっ」




 そう言って少し拗ねた顔を見せると、ずっと膝辺りに架かっていた水色パンツを脱いで、辺りにほん投げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ