七日晴海①
ある日の昼休み。
友達と昼飯を食べ終わって中庭にでも行こうかと話していた頃、携帯電話がブルった。
『ヒトフタサンマル、風紀委員会室に来られたし。 風紀委員長 七日 春海』
俺はどこぞの軍隊にでも所属しているのだろうか。
別に俺は風紀委員でもなければ、もちろん軍隊に所属しているわけでもない。なにも関係ないはずなのだが、時々この手の予定外な命令メールが送られてくる。
七日 春海。
友達でもなければ部活の先輩でもない。ついでに言っておくが俺は部活に入っていない。
この送り主は風紀委員長。高校三年生だ。学校を統べる第二位の立場であるといっても過言ではない。この人が一声発すれば、何十人もの風紀委員からなる軍隊ばりの組織的包囲網が形成され、誰一人として逃げることはできないと言われている。
いつだったか突如登録されていないメールアドレスから今回と同様な手口でお招きいただいた訳だが、その時は全く訳が分からず震え上がったことを覚えている。
なんせメールアドレスを交換した覚えの無い、しかも風紀委員長という立場の先輩であり、その役職名を見ただけで威厳を感じさせるお立場の人から突如メールが来て震え上がらない人がいるなら是非とも爪の垢を煎じて飲ませて欲し――想像しただけで今食べたものが出てきそうなので最後までは言わないでおく。
……遅れるとどんな罵倒をされるかわからないな。
友達に一声かけ、俺は風紀委員会室に向かった。




