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妃乃里と買い物24 ― 女の悲鳴の魔力

 俺は急いでカーテンを開けて外を覗いた。顔をなんてもってのほか、目ですら可能な限り黒目しか出さない。



「助けてーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」



 本気も本気。全力で悲鳴を上げる妃乃里の姿がそこにはあった。

 必死に助けを求めて歪ませた妃乃里の顔のすぐ真下に、なんと金髪男の顔が妃乃里の谷間に埋まっていた。

 妃乃里の両腕を掴み、おっぱいとおっぱいの狭間に顔をダイブさせている。

鼻はかなりとがって高かったから、鼻だけは谷間の終わりまで届いているかもしれないくらいにめり込んでいる。




「おい、やばいって! 早く行こうぜ!」



 もう一人の男、妃乃里の胸を二番手で待ち焦がれていた赤い頭の男が周囲をキョロつきながら血相変えてあたふたしている。


「襲われるーーーーーーーーーー食べられちゃうーーーーーーーーーーーーーっ!!!」



 妃乃里はこれでもかというくらいに声をあげている。いつもまったりした声しか出さない長女のどこからこんな声が出るのか不思議でしょうがないが、こういう時のために鋭気を溜め込んでいるのだろうか。


 まあ俺は今さら驚いたりしない。これまで何度もこういう光景を見てきたから。


「おい! なんかやばいって! 早くそこからどけよ。逃げようぜ。いつまで顔突っ込んでんだよ!」


「う、動きたいけど……プハァッ! 動けねえんだよ! どうなっんてんだよこれぇ……うぷっ」


 俺の目には金髪男が顔を妃乃里の谷間に顔を突っ込んでその顔を押しのけようと妃乃里がその顔を押しのけようと左手で金髪男の頭をがっつり掴んでいるというように見える―――しかし実際はおそらく違うだろう。なぜそう思うかという問いには、妃乃里の表情を見れば分かると答えたい。妃乃里は叫びながら、その口元ではにやりと口角を上げているのだ。

 その妃乃里の状況をもう少しよく見てみると、金髪男は動けないと言っていたが、それもそのはず。妃乃里の左足は、金髪男の右足の上に置かれていた。

 胸元周辺のインパクトで気づきにくいが、しっかりとその場に押さえ込んでいるのである。

 押さえ込んでいるといっても実際はつま先だけ重なっているレベル。相手は若さを全面に押し出しているイケイケ男だ。体力なんてフェロモンのごとく撒き散らしていそうだから、そのパワーでこんな状況どうにでもできそうだが。

 けれども実際に金髪男を動けなくしている要因は、別にある。

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