悩み相談室⑥
藤林はうで組をやめ、三上が後ろから何かを取り出すのを見ていた。
三上はそれを机の上に置き、被せてある布をはぎ取る。
すると、そこには紫色の小さい座布団のようなものの上に、手の平サイズの水晶があった。
「何これ。綺麗」
これまでの不機嫌顔がふっとび、興味深々に水晶を覗き込む藤林。
しかしこれが出てきたというのは言い予感はしない。
「ここに手の平をかざしてください」
「手のひら?ん、こう?」
三上は対応を接客モードの変え、先ほどのような聖母みたく朗らかな顔になる。
「そうです。そして、その人の事をよく思い浮かべてください」
「わかったわ」
藤林は目を閉じ、意中の彼を想う。
三上は水晶に目を落とし、じっと見つめていた。
「見えてきました」
「え! ほんと?」
藤林は目を開けて手を水晶から離して覗き込む。
すると、水晶の中央がきらびやかに輝きだした。
「あーほらいたいた」
「彼?え、彼なの?全然見えないけど」
「これはどこですかねえ~。ショッピングセンターですかねえ~」
「……あたしには見えない。全然見えないわよ。ねえ、彼は一体何しているの?」
「お? 誰か横にいますね~。髪が長いから女の子でしょうかね~」
「なんですって?!」
藤林が机をバンッと強く叩いて勢いよく立った。
それと連動するように、水晶の中の光の強さが増した。
「おー、あなたの思いがこの水晶に届いたようですー。はっきりと見えますよー。あらあら、2人で腕を組んで楽しく買い物をしていますねー」
今の三上の顔は、朗らかな顔というよりは面白がっている顔に見える。
「腕を組んで……ですって…………!!! 相手は?! 相手は誰なのよ!!!!!」
怒り心頭といった様子で藤林は声を荒立て、三上に問いただす。
「誰でしょうかね~。顔はよくわかりませんけど、白い服着てますね~。あと眼鏡かけてます。あとはそうですね~。。。わかりませんね~」
「ワタシというのものがありながら……なんて男なの!」
怒りで顔が赤くなった藤林はそのまま走って教室を出て行った。




