悩み相談室➃
少しインターバルを置いて、俺は二人目の相談者を呼んだ。
扉が勢いよく開き、容姿が派手めな女子生徒が威勢良く部屋の中に入ってくる。擬音で表現するならズカズカというのが一番しっくりくるだろう。
この部屋を開く前に渡したはずのアンケート用紙は見当たらず、低学年向けアニメの悪役のような姿をした俺には目を配ることもなく椅子に向かって一直線に進んで行った。
「ねえ、のあ、ちょっと聞いてよ!」
「ん? ああ、みき。どーしたのー?」
藤林美紀。俺らと同じ二年生。その限りなく薄めのブラウンが光の具合によっては金髪にも見えなくないが、それを筆頭にした派手な容姿で学年の中でも目立っており、知らない人はまずいないだろう。派手というだけでなく、美人ということでも名を馳せている。家柄もいいらしく、決して安くはないであろうアクセサリーを身につけている。
まるで待ち合わせでもしてたように自然と会話を始める2人。どうやら親しい仲のようだ。
相談者の中には、三上と親しい生徒もたまにくる。いつも話してるならわざわざこんなところに来なくてもいいような気がするが。よっぽど他の人には知られたくないような話なのだろうか。
「あたしさー、今好きな人がいるんだけどさー、結構それなりな仲なわけよ」
「うんうん」
「お昼休みに屋上でばったり会ったり、下校がたまたま一緒になったり、あとあと、休みの日にCDショップで偶然あったりさ!」
「……ふーん。そうなんだー」
藤林は椅子を所定の位置よりもぐいっと三上に近づけて話を続ける。
長い髪の毛先を少し内側に巻いているからか上品に見えるが、俺を無視してずかずかと入りこみ、足を組んで三上と太々しく話している姿はいまいち気に入らない。




