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辻橋女子高等学校@生徒会室⑤ ― 渡されたものはやけに肌色の多いDVD

 もう不穏しか感じない。全身がこの空気に構えている感じだ。沙紀の口が動かないでほしいくらいに。


「私がすべてに嫌気をさし、自愛する筋肉にすら心が離れそうな時だった。『筋肉にだって思いはあるわ。思いがあるということは、表情があるということ。スポーツとはいえ、勝ち負けがある以上、多少の憎しみや恨めしが生まれるのも無理はないし、人間であればそれは普通なことよ。そもそもいくさの代替のようなものだしね。でもね、中にはそういう負の感情なんて生まない、お互いが尊重し合い、高め合い、分かち合う……そんな汗のかき方もあるんだよ』と姉様は私に優しく話しかけて、そっとあるものを渡してきた」


 妃乃里の声真似は瓜二つ、聞き分けが全くつかないくらいに似ている。前から寄せるのがうまいと思っていたが、今の俺ならわかる。おそらく、自分の声帯を瞬時に変化させて妃乃里に近づけているのだ。きっと。まあそんなことはどうでもいいくらいに妃乃里が何を言っているのかわからない。そして最後の「あるもの」が気になってしょうがない。そしてそれは沙紀をこんな状態にした元凶に違いない。聞き出さないと。


「一体何を渡されたんです……カ……?」


「ん? あぁ、DVDだ。肌色が多がやけに多いが」


 あんのバカやろぉぉぉおおおおお! 何してくれとんじゃ! 俺がこんなに大事に育ててきたのに! もう気持ちは親気分だよ! ほんとろくなことしないな、あのバカ姉は!


「私は感銘を受けた。こんなものがあるのかと。お互いが全てをさらけ出して、お互いを尊重し、高め合う……すばらしいことだ。妃乃里姉様が勧めてくれただけはある。これまで何度も見ているが、いまだにどうやったら勝ちなのか、どうやったら負けなのかよくわからないのだがな」


 いや、きっとそれは勝ちも負けもないと思います。攻守攻防もなく、あるのは攻めと受けだけ。戦いとはかけ離れた場所にあるものだと思いますけども。


「ぱっと見、プロレスか?とも思ったりもする。それでお前ともよく試しにプロレスをしているが……あれは明らかに私の勝ちだろう」


 すみません、プロレスをしていたつもりはありませんけども。していたとすれば、「プロレス技かけられ器」ですけども。いつもちょっと脚貸してといって急に四の字固めとか始めてましたけども???


「あれはプロレスというか……一方的に技をかけられていただけデ……」


 もじもじ話しながら沙紀の顔を見ると、じっとこちらを向いていた。

 そして近寄ってくる。


「私はあれの実戦経験がない。この学校にいる以上、できる機会もないし、男との接触は基本許されていない。正直、不安なんだ。これから私はしっかりと理事長の娘たちに教えられるのか……性教育ができるのか……」


 ……ちょ、ちょっと沙紀お姉ちゃんっ! そんな真剣な顔をしてどうしちゃったのさ。その表情で、無言で近づいてこられたら……どうしていいかわからんないじゃん。なにっ、いったいなにっ!!!


「今から私としてみないか? ´プロレス’を」

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