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辻橋女子高等学校@生徒会室④ ー アバズレミルクタンク

 安堵できたのはものの数秒だった。


「妃乃里姉様に教えていただいてから、私は悶々とした日々を過ごしている」


 はい、全ての元凶、ここに現れました。

 あのアバズレミルクタンク! 一体何を沙紀に吹込みやがった! 間違いなく妃乃里だ。純朴な沙紀をこんなにしたのは。沙紀はまっすぐなところがいいところでもありイマイチなところでもあるのだが、良くない方向にその性格が向かった先には圧倒的によくないことが待っているに決まっている。


「……一体何を教えられたのですカ?」


 恐る恐る聞く。


「私は一時期とても悩んでいた時期があった。学校のあらゆる部活に入り、入ると同時に試合に出て圧倒的な力を見せると、私は一躍時ときの人となった。あらゆるスポーツ協会から呼び出された。それは今すぐ日本代表になってほしいというものもあれば、二度とこの競技に近づかないようにと言われたものもあった」


「じゃあその好印象だった競技の方にはいかなかったんですカ?」


「その前に練習の時点で落とされたんだ。君はこの競技には向いていないといわれてな。誘っておいて突き放すとは……ひどい扱いを受けたものだ」 


 その力というのは文字通りパワーを意味するのだろう。沙紀は頭は良いが、不器用という言葉で形容してもそれを聞いた相手に誤解が生じないくらいには不器用だ。だから短期間に各スポーツのルールを把握してその通りできることは考えにくい。勉強も努力している部分があるが、スポーツのルールはそれまでの試合で起きた事象から特別に禁止したり、再発しないように設けられたルールなどが存在し、論理的な思考を超えたものもあるため、おそらくだが、沙紀はそういうのがあるとすぐにインプットすることはできなかったと思う。ゆえに、沙紀は見様見真似で動いたと思うが、十中八九、何かやらかしたのは言うまでもないだろう。沙紀の力、パワーについては、俺が一番よく知っている。少なくとも、学年一、下手すれば学校一の怪力である賢吾のパワーなんておこちゃまと思えるくらいの腕力、脚力を持っている沙紀をそう簡単に手放すわけがない。身体的にみれば、どのスポーツでも逸材と判断されるのは間違いないだろうからな。


「私は力が欲しかった。もっと、力が欲しい……。もう自分では限界だったんだ。これ以上自分で強くできる気がしない……それで悩んで苦しんでいた」


 どうしてそれほどパワーに執着するのか……それはこれまでも思ってはいたが、聞いたことはなかった。感情の読めない沙紀が唯一表にわかりやすく示すそれについて、見た目ほど軽く触れてはいけないような、そんな気がしたから。


「そんなとき、私に助言をくれたのが妃乃里姉様だった」


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