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4ている:【娘ねこ】と平穏な一日

「ご主人さま? 次はどこに行くのですか?」


左腕に自分の両腕をクルクルと絡ませピッタリと寄り添い、大きい瞳ををキラキラさせてこちらを見上げて聞いてくる。


朝の甘えタイムが終わった後、約束通り海にほど近いショッピングモールにカリンを連れて来ていた。

「おうちにいるのもカリンは好きなのですよ?」とも言っていたが、準備を始めるとやはり嬉しそうにしていた。

近所では慣れているのか気にされないが、ショッピングモールではそうは行かない。

耳を隠す為に白いフワフワの帽子としっぽを隠す為もあり全体的にふわっとした感じの服。

普段着とメイド服のあいだを行くようなその服装とカリンの見た目が相まっていて、なんというか目立つ。

ちなみに爽香イチオシのお出かけ着だそうだ。

他にも同じような感じの服を買ってある(買わされた)

似合うし可愛いのは大変よろしいのだが……この姿で注目され、そして……


「ご主人さま? どうされたのですか?」


今度は少し不安そうに、つま先立ちをして顔を近づけてくる。

そう、この姿で「ご主人さま」と呼ばれると、聞いた人は更にビックリする事うけあいだ。

(ご主人さまって呼ばれてるよ)

(そういう趣味なのかしら)

(羨ましい、俺も呼ばれたい)

などなど……まあ、もう慣れたけど。


「なんでもないよ。 カリンは可愛いなと思って」


「かわいい……ですか?」


「そうだよ」


そう言って頭をポンポンとなでる。


「んぁ……ん。 ご主人さま、大好きなのです」


街なかでもこれくらいの事が出来る位なれた。

この状況に爽香が加わると更にまわりの目が悪化するのだが……


呼び方については一度カリンと話をしたことがある。

外にいる時だけでも名前で呼んでくれないか、と。

答えは「や」だった。


「カリンのご主人さまは、ご主人さまなので、ご主人さまと呼ぶのですよ?」

「それに、ご主人さまをご主人さまと呼べるのはカリンだけなのです……特別なのです」

「ご主人さまじゃない呼び方は、や、なのです」

「……ダメなのです?」


凄くしょんぼりした顔でこんな事言われたら、ダメとは言えなかった。

さま付けの名前で呼ばれるのがこそばゆいのは知っているのもあるが……

そんなやり取りもあり、今にいたっている。


「ご主人さま?」


「折角だからカリンが家で着る服を買おうかと思って」


「?」


「いま着ている服は普段着るには少し派手だしね。 もう少し身軽というか、シンプルな感じの……」


「ご主人さまのシャツがあればカリンはよいのですよ?」


「うーん……なんというか、寝間着なら良いけど、普段着には……」

(本当にワイシャツだけしか着ないし)

「この前爽香が選んできたスポッと着れるのなら着るの楽だろ?」


「カリンは気にしないのですよ……?」


「でもほら、シャツだけだと着替えなきゃだけど、ああいう服ならちょっと出かけようとか出来るぞ」


「……ご主人さまとお出かけ?」


「そうそう、コンビニとか」


「……ぁぇ……」


「それに、俺が買ってあげたいってのはダメかな?」


「ご主人さまが選んでくれるのです?」


「カリンは可愛いから何でも似合いそうだけどね」


「……カリンはかわいいのです?」


「もちろん」


「さやかさんよりも、かわいいのです?」


「……何故そこで爽香が出てくるのかわからないけど、そうだな。 カリンの方が可愛い」


「んみゅ……うれしいのですよ……。 それなら……あのあの、ですね……ご主人さまに選んでほしいのですよ?」


「え、俺が?」


「ダメ……なのです?」


「……期待するなよ……」


「ご主人さまの選んでくれたのモノはなんでもイチバンなのですよ♪」


絡めた腕に力を入れてギューっとくっついてくる。

適度に柔らかい双丘に挟み込まれる感触はいいものだけど……大きくなったな……

今日だけで何度目かの同じ感想だけど。


「そっか……カリンはやっぱり可愛いな」


「ん……っ……はぅ」


帽子をかぶっているので頭の後ろ当たりをなでると、気持ち良さそうにしながら元々絡んでいる腕を更にギュッと絡めて擦り寄ってきた。


この後、服屋でミニファッションショーが開幕されるとともに、

試着室の中から「ご主人さま? ちゃんとそこにいるのですか?」と何度も繰り返したり

カーテンからちょこっと顔を出して「ご主人さま? みてほしいのですよ?」と、はにかむ仕草に店員さんと共に顔を赤くしていた。



――――――――――



「ふふっ……えへへ……♪」


お買い物を終えてショッピングモールの展望台にあるベンチ。

隣でニコニコしながら買い物袋を抱きしめている姿を見ていると、こっちも嬉しくなってくる。


「ご主人さまはコーヒーのお豆を買われたのですか?」


「そうだよ。 あと、カリンの好きなミルクティー用の茶葉も買ったぞ」


「ミルクティーなのです? えへへ、ご主人さまは優しいのです」

「でもでも、コーヒーも好きなですよ? ミルクたっぷり美味しいのですよ」


「あと、これも」


「にゃっ!? ご主人さま!ご主人さま!これは、チョコレートなのですよ!」


「美味しそうだったから家に帰ってから食べようかと思って」


「ふぁぁぁ……」


瞳の中にハートが見えんばかりにキラキラしている。


「それとも、いま少しつまむかい?」


「……。 ダ、ダメなのです。 おうちでご主人さまとゆっくり食べるのですよ……」


「そっか。 じゃあそうしようか」


「はい、ご主人さま」


予定よりも早く買い物に来たおかげで、買い物が終わってもまだ昼を少し過ぎた時間だ。

このまま帰るのも勿体無い気がする。


「カリン? 何かお昼を買ってきて、散歩しながら何処かで食べようか」


「お散歩……しながらなのです?」


「買ってから家に帰って食べてもいいけど、気持ち良い天気だしさ。 どうかな」


「はい♪ 嬉しいのですよ、ご主人さま」


「よし、それならカリンの好きな食べ物を買いに行こうか」


「好きな……食べ物なのです?」


「……チョコレート以外で、ね」


「ご主人さまはイジワルなのですよ……」


口をツンとして、ちゃんと分かってます!というような視線も微笑ましい。


「えと、ご主人さま? サンドイッチを少し作って来たので沢山はいらないのですよ?」


と言いながら、小さなバスケットをバッグから取り出し、その中のサンドイッチを見せてきた。


「え!? カリン、いつ作ったの?」


出かける少し前までみみそうじしてゴロゴロしていたのに……


「?? ご主人さまが用意をしているあいだに作ったのですよ?」

「でもでも……時間があまり無かったので簡単な物を少ししかつくれなかったのですぅ……」


「いやいや、凄いよ、カリン……ありがとう」


「えへへ……ご主人さまに褒められて嬉しいのですよ」


簡単な物と言うが、種類もあるし、綺麗に作ってある。

短時間でどうやったら作れるんだ……

元々料理を教えたのは俺なのに、すっかりスキルも要領もカリンの方が上だ。

最近はお菓子作りや弁当作りも練習しているようだ。

数ヶ月で家事全般をすっかりこなすようになってしまった。

しかも、楽しそうに。


「ご主人さまのためなら、なんでもするのですよ?」


思っていたことを見透かされるようにニコッと覗き込んできた。


「お料理も、お掃除も、お洗濯は特に好きなのです。 ご主人さまの香りがいっぱいなのです」


「カリンは本当に凄いね、え?」


何かおかしな事を言った気が。


「えへへ、ご主人さまに喜んでもらえるの嬉しいのですよ?」

「……カリンはご主人さまの為だけにいるのですよ? ご主人さまだけのカリンなのですよ?」


覗き込んだままの姿勢でさも当たり前のように、結構大胆な事を言う。

慣れてきたとは言え、これだけ素直に言われると……顔が熱くなる。


「……あ、え……。 じ、じゃあ、買いに行こうか」


「はい、ご主人さま♪」


ごまかすようにカリンの頭をなでて、サンドイッチに合わせたおかずを買いに行くことにした。

ベンチから立ち上がり、もう一度ショッピングモールの方に向かう。

あたりまえのように腕を絡ませて寄り添ってくるカリンに


「食後のデザートも買わないとな? 甘い物食べたいし」


「ご主人さま……?」


「チョコレート的なクレープとか、ケーキとか食べたいかな……カリンは?」


「ご主人さまはイジワルなのですよ……」


顔を少し赤くして口をとがらせながら、キュッと絡めている腕の力を強めてきた。



――――――――――



ショッピングモールから少しだけ移動して海を見下ろすことが出来る公園。

お気に入りの場所でもあり、よく足を運ぶ場所だったりする。

お弁当を食べる場所をカリンに聞いたところ、何故かここが良いと言われたのだ。

近くなので問題は無かったが、妙にカリンが息巻いている気がした。


「ご主人さまは、よくこられるのですよね?」


手入れされた芝生の上で並んでいるカリンが聞いてくる。


「遊びに来ているわけじゃ無くて、図書館とかを利用しているんだけどね……」


ここは結構広い敷地に図書館や天文台等が併設されている施設だ。

誰でも入れるというわけではなく、一応そういった方面の勉強や関係している人しか入れない。

若しくは紹介者がいて、少しの条件を満たしているというのもある。

それもあってか、とても落ち着いている場所で、綺麗に整備されている。

本来俺や清明はここに入るのは難しいのだが、爽香の学校の関係施設なので紹介という形で入館証を発行してもらえた。

さすがお嬢様学園。

清明はひとりで来ることはあまり無いようだが、俺は結構利用させてもらっている。

半々くらいの確率で爽香もいたりするのだが……。


「気持ちの良い所なのですよ」


入館証を持っていると同伴者が1名だけ認められるので、カリンもすんなり入る事が出来た。


「ん――。 カリンも気に入ったかな?」


施設の中でもお気に入りの芝生のフリースペース。

少し大きめの木なんかもあったりして、程よく木陰が出来ている。

今はその木陰でお弁当も食べ終わり、ゆっくりとしていた。


「はい、素敵な場所なのですよ」


「あ、そうだ。 デザートはこの袋だよ」


食後のデザートにと買った、チョコレートドーナツをカリンに渡す。

フニャッとした笑顔で受け取った後、ハッとして……


「ご主人さまは、食べないのです?」


「カリンの作ったお弁当が美味しすぎて食べ過ぎたよ……今は良いかな。

 あ、カリンは気にしないで食べていいからね」


「ぁう……でも……」


「カリンが幸せそうに食べているところを見るの好きなんだけどな……」


「ぅぅ……ご主人さまぁ……」


手渡された紙袋を少しあけるとチョコレートの良い匂いが広がる。

少しウットリしているカリンを見るのは本当に微笑ましい。

と、そのままドーナツを取り出すかと思いきや、袋を芝生の上に置いてふとももを手で払う。


「あの、ご主人さま……。 どうぞ、なのですよ?」


両手をギュッと胸の前で握りこちらの様子を見る。


「?? カリン?」


「あの、あのあの……カリンのおひざ……まくらにして欲しいのですよ……」


「え? あ、えっと……」


「少しおやすみになってもよいのですよ? 食休み……ですよ?」


「それはいいんだけど、ひざまくら……」


スカートの裾から伸びている白い足が眩しい。

家の中ではしたりしているけれど、こう外でやるのは何となく……


「カリンのおひざまくらは、ダメ……なのです?」


「いや、そういうことじゃ無くて」


「さやかさんにはされるのに……ですか……」


「!? カリン……何を……」


「ときどき、ご主人さまの髪から……さやかさんのいい香りがするのですよ?」


ニコッと微笑みながら。

「何でですか?」と口にはしないけど……


「……」


「カリンも……したいです。 ここで」

「ご主人さまのコト、もっと知りたいのです、色々なコトいっしょにしたいです……」

「……ダメ、なのです?」


ダメと言わない、と知っているのにこのダメ押し。


「じゃあ……おねがいします……」


「はい♪ どぞ、なのですよ」


ふわんとしたなんとも気持ちの良い感触が後頭部をつつみこむ。

上を向いている形になるので、必然的にカリンを見上げる感じになるのと

最近大きくなって来た胸が気になってしまう……ホント何度目だ……

特にひざまくらしてくれている時は、かがんだりすると頭に微妙に乗っかったり。


「ご主人さま?」


「うぁっ! な、なにかな」


「どうされたのですか? おひざ、気持よくなかったですか……?」


シュンとした感じの声で心配そうに聞いてくる。


「そんな事ないよ、すっげー気持とよいぞ」


「えへへっ、うれしいのですよ?」


気持ちの良い風と、芝生の香り。

木々の音と鳥の声。

特に何を話すわけでも無く、ゆっくりと流れる時間にまどろみながら……

嬉しそうに微笑んでいるカリンに


「カリン、は……娘ねこ……っていうのは……」


「はい、カリンはご主人さまためだけの娘ねこ、なのですよ」


あたりまえのように返事をする。

カリンは自分が娘ねこだということを理解している。

ただ、娘ねこという存在が何なのか、と言う事はわからない。

俺の存在があってこその自分。

口には出さないが、その事をいつも主張している。

それが今の返事。


「カリンはカリンがどこからきたのかとか、どうやってきたのかとか、わからないのですよ……

 でも、ご主人さまのためだけにカリンはいるのですよ……」


「でも、起きる前に俺の名前を呼んだんだよな……あれは……」


「わからないのですよ……ごめんなさいなのです……」


申し訳無さそうに目を伏せてしまう。


「カリンが、その……夢から覚めたとき……あの……あのあの……ご主人さまと……」


「わあぁ! いいから、そのことはいいから」


「ご主人さまと……えへへ……キス、していたのは覚えているのです……」


フニャンとした顔を両手で隠す。

ベッドに潜り込んできたり、それこそ起き抜けにキスしたりするのに……

家の中では気が大きいのだろうか……?


「……カリンは、ご主人さまといっしょにいていいですか? 邪魔ではないですか?」


「そんな事あるはずがないだろ……。 カリンは……俺を助けてくれたんだよ」


「カリンが……なのです?」


悲しみに沈み、孤独になりかけた俺を。

そんな事を忘れるくらい大変で、気になって、賑やかで、そして……あたたかくて。

確実に暗く、寒くなるはずだった家を明るくあたたかくしてくれた。

カリンがいなかったら……などとは想像も出来ない。

もし……


「ご主人さま? カリンはご主人さまのところからいなくなったりしないのですよ?」

「カリンにはご主人さまだけなのです」


少しでも不安な考えが浮かんでくると、この娘ねこは察したように言う。


「今日も、明日も……明後日も暑い季節も、落ち葉の季節も」

「雪の季節も……なんどもなんども繰り返しても、ずっとずっと、一緒にいるのですよ?」

「ご主人さま?」


とりようによっては結構重い言葉だが、俺にとっては何よりも……。


「だからですね……ご主人さま? 少し寝てしまっても大丈夫、なのですよ?」

「カリンのお膝の上で」


心地よい鈴のような声


「ご主人さまの目が覚めた時も、同じようにカリンはいるのですよ?」

「ご主人さまが目を覚ますたびにカリンは一緒にいるのですよ?」


「そっか……ありがとう」


そう言いながらゆっくりとまどろみに身をゆだねていく。

夢見心地に意識を手放していく途中、ふとあたたかくて柔らかい感触がくちびるをふさいだきがした。


「……ご主人さま、だいすきなのですよ」


小さくつぶやくその声はやはり鈴の音のように心地よかった。



――――――――――



泣くのを我慢しているようだった。

人前で泣いている場合では無かったから。

気丈に、自分を強く見せて心配をかけないように。

街はきらびやかな電飾と楽しげな音楽が流れている。

雪もチラつきはじめ恋人同士のロマンチックなイベントにも華を添えていた。

その世界からひとり取り残されたように、何処かに向かって歩いていた。

道すがら白い塊が目に入ってきた。

街の明かりに身を任せていれば、上を向いていなくても、正面を見ていれば気が付かなかったかも知れない、震えている小さなソレ。

そばに寄り、身につけていたマフラーで包み、少し持っていた食べ物をあげる。

ゆっくりと食べ物を口にしているソレをなでながら、ポツリと話しかけ……

………………

…………

……



ポスッとなにかが顔の上に落ちてきて目が覚めた。

手に取ってみると、ふかふかした……なんだこれ?

しばらく手でモフモフした後……ハッと気づいた。


「カリンの帽子か……って、あ……」


帽子が落ちてきたって事は、隠していたみみが見えてしまうという事だ。


「カ……」


名前を呼ぼうとして見上げると、気持ち良さそうな寝顔があった。

どことなく嬉しそうに微笑んでいる気がする。


「カリン?」


ひざまくらの体勢のまま、頭をそっとなでる。


「にぁぅ……ご主人……さま? …… ……」


トロンとした目をしながら反応する。


「すっかり寝ちゃったよ、ごめん。 あと、ほら帽子」


「にぁ……? えへへ……カリンも寝てしまいました……ごめんなさいなのですよ」

「ぁん……んっ……ふにゃぁ……」


頭をなでながらついそこにぴょっこり立っているみみもなでてしまった。

少し頬を染めながら、気持ちよさそうに頭をなでている手にすり寄せてくる。


「あ、ごめん、つい……」


「もっと、もっとなのですよ……ご主人さま? もっと、なでて?」


外なので周りを少し気にしたが、お願いされるがままにふにふにとした感触をたのしむ。


「えへへ……気持ち良いのです、やさしいのですよ……ご主人さま」


ひとしおカリンの感触をたのしみんだ後、身体を起こして隣に座り直す。


「もうおしまいなのです?」


「ずっとなでまわしていたいけれど、ここじゃな……夕食の買い物をしながら家に帰ろう」


「おうちで続きをする……のです? ご主人さま?」


「その言い方は何かアレだな……。 続きと言うか、お菓子とか食べようかなと」


「カリンはいいのですよ? もっと、たくさんたくさんなでて欲しいのですよ?」


「……かわいいみみが隠れるのは勿体無いけど、帽子をかぶりなさい」


「ご主人さまのいじわる、なのですよ」


何だか今日はこの言葉を沢山聞いた気がする。


「ご主人さま? 寝ている時に電話が来ていたみたいなのですよ? すぐに切れてしまいましたけど」


「メール、かな」


スマホを取り出すとメールが二件来ていた。

一件は清明から明日の予定はどうだ的な連絡と、もう一件は爽香から何してるの?的なメールだった。


「……」


「ご主人さま?」


「よし、カリン」


「??どうしたのです?」


「家に帰って、今日買った服を着て撮影会だ」


「ふぇ!? どうしたのですか? ご主人さま??」


「カリンの写真を撮って、可愛さを見せびらかしてやろう」


メールの返事はそれまでおあずけだ。


「ご主人さま!?」


「と、その前に夕食の買い物だな」


「あのあの……はい、それはいいのですが……」


「おいで、カリン?」


立ち上がり頭の上にクエスチョンマークが沢山出ていそうなカリンに手を伸ばす。

その手に手を重ねる時にはすぐに表情がかわる。

いつものように嬉しそうに、上機嫌に……


「はい、ご主人さま」


当たり前のように、俺の腕に両方の腕を絡ませて、見上げながらいつもの笑顔で。

きっとこの先もずっと変わらない、そう思える。


「ご主人さま、大好きなのですよ♪」


挿絵(By みてみん)


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