ダナエ
少し離れた席に座っているシュレムは、ヒマそうに白衣の裾を直していたが、僕の何気ない視線に不思議そうな顔をしていたのが印象的だった。
そうだ、強気だが可憐で美しいシュレムさんは彼氏ありなのだろうか……是非とも知りたいな。いや、アマゾネス社会では彼氏って存在自体がどうなっているのやら。気に入ったイケメン奴隷を無理矢理、奪ってきたりするのだろうか? う、奪われたい!
「こちらのシュレム看護師は……」
僕の市長に対する質問に被せるように、彼女は鼻息荒く即答した。
「私は今、病院での仕事にも慣れて毎日が楽しいので、しばらくは独身のままでいたいのです」
唇を尖らせて大きな目で眉をひそめた。はっきりと自分の意思を伝えるのが、ケプラー流らしい。
そんなにも、あからさまにイヤそうな顔をしなくてもよいではないか。コテンパンにしたことを、ずっと根に持っているのだろうか。
「うひひ、ふられちゃったな! だが……まだチャンスは残ってるぜ。簡単にあきらめるなよ、オカダ君」
カクさんが、冷やかすように慰めてくれた。
「そうよ、女心については私に任せておいて。イイ所を見せたら一気に距離が縮まる事もザラにあるわよ」
スケさんも、仲人オバさんみたいな口調になってきたよ。
「ふん……」
シュレムは『私を落とせるものなら落としてみせなさいよ』といった生意気な態度だった。
恋愛術に決して長けた方ではないが、これでも僕は調子のいい時、女性から断られた事は一度もなかったのだが……誰も信じてくれない。果たして地球のイイ男の条件が、こちらケプラー22bのアマゾネスに通用するのかどうか……。




