ヴァージニア
カクさんが小声で呟いた。
「ちっ……クンクンだけじゃなくペロペロしておけばよかったぜ」
「え? 何か言った?」
シュレムはカクさんの鼻の穴にガーゼを詰めながら訊き返す。
「いえ、何でもありませんことよ!」
カクさんは鼻声で答え、オオカミ流の愛想笑いをした後、僕の横のポジションにさっと戻った。
「お前なあ、レディーに対して失礼な事をするなよ。我々の品格が疑われるじゃないか」
「えらいすんまへんなぁ……かんにんや」
「……そういう口調がダメだというのだ」
再び二人と二頭で歩き始めた時、カクさんからナノテク・コンタクトレンズを中継した脳内通話が僕に限定で届いた。
『彼女、あの歳でまだ処女だぜ……間違いなく男を知らないニオイだった……』
「……げほっ!」
僕は何も飲み食いしていないのにイキナリむせた。
シュレムが黒目がちの目で不思議そうに訊いてきた。
「んー? 急にどうしたの?」
僕の視線は、いけないと思いながらも、ついつい彼女の体の方に下がっていった。
ケプラー22bの重力をモノともしない弾力のありそうな胸。それに締まったウエストと適度な太さの長い脚……。この色気で、男と付き合った事がないなんて地球ではありえないな。
女尊男卑のアマゾネス世界では、彼氏と付き合うって概念がないのだろうか。男はオカマのA級奴隷か、それより低い階級のB級奴隷しかいない訳だし。
……だったら、どうやって結婚して人口を増やしてるんだ。まさか総督府の完全管理下で人工授精し、計画的に人口を調節しているのか? 地球から引っ越して100年も経っていないのに、そんなSFみたいな世界になるのかなあ。
「……私の白衣がそんなに珍しいの? 地球とそんなに変わらないはずだけど」
シュレムは僕の視線に気付き、自分の格好や体が変なのか気がかりのようだ。自分の体を見回して、下着が透けたりしてないかチェックしている。
カクさんみたいに頭をどつかれないように気をつけねば……。




