ポリヒムニア
一瞬、本能で何かを感じた。
「アツシっていうの? 素敵な名前ね!」
ヒロミがふざけて僕に抱きついてきた。僕は今、薄汚い黄ばんだ服を着ているのにも関わらずだ。
おいおい、看護師さんと比べてずいぶんと態度が違うなぁ……この差は何なんだ? 彼女の、さらさらロングヘアーからは、とても良い香りがした。
ポニーテールのマコトは、僕に遠慮知らずのボディタッチをするヒロミを見て信じられない様子だった。
「わ、私も~!」
座っていたマコトは、急に立ち上がって僕の頭を両手で抱きしめた。
「うわぁ……ウソだろ!」
マコトのブラに包まれた柔らかな胸の感触がモロ顔面に……伝わってこない。ひょっとして、もしかするとAカップぐらいなのかな? 僕は小ぶりなのが好みだから全然OK。服を通しても伝わる、彼女の心臓の鼓動が妙に心地よい。
「マコト~! 新入りさんなのに、びっくりしちゃうでしょ。いくらなんでも恥知らずよ!」
「あなたに言われたくないわ」
ヒロミは嫉妬したのか、僕の腕を引っ張ってマコトから注意を逸らそうとした。ケプラー22bの開拓移民さんは、やっぱりすごいな……女の子の力とは思えない。
それにしても男性に対する、これほどの積極的なアプローチは、本当に驚いてしまう。こいつは嬉しいカルチャーショック! やはりこれは女性ばかりの世界で、男性が極端に少ないからなのか?
地球ではとても考えられない親密な距離感だ……これがケプラー流だとすると、アイドルばりに外もおちおち歩けないかも。
ああ……こんなにモテたのは小学生の時以来だな。あの時は、かけっこがクラスで一番速かったから、女の子から引っ張りだこにされてたっけ。
えぇ~? ちょっと! どさくさに紛れて他の女の子達も、僕の手を握ってきたりして困るなぁ~。




