ルジーナ
第二十五章 破滅の使者
シュレムとマリオット姉妹、それにブリュッケちゃんは職場や学校にも復帰できず、総督府に半ば軟禁されているらしい。僕から色々と訊き出すための切り札にされているのだ。
チトマスが運転するミニパトの中で、カクさんからの緊急脳内通信がコンタクト・ドライブシステムを通じて入った。
『ついに衛星軌道上にも事態の進展があったぜ。インディペンデンス号に向かって接近する未確認大質量飛翔体を確認。こいつは前回の植民惑星査察団が使用した国際連合宇宙局所属・耐ハイパーディメンション型 宇宙輸送艦ズヴェズダ号に間違いない。もちろん乗組員だったゴールドマン教授にも確認済みだ』
『インディペンデンス号に衝突させるつもりか。デュアン総督も、ずいぶんと無茶な力技に出たな』
『さすがに全てのコントロールを奪う事は不可能だったようだ。高度調整用リブースト・スラスターの制御だけで、ぶつけてくるつもりだぜ』
『避ける時間は十分にあるが、反逆の狼煙を上げてやる』
『おいおい。ついに一斉蜂起でもするつもりなのかい?』
僕はアディーに頼むと、静かで精神集中できそうな場所に車を停めてもらった。いつか見覚えのある公園だ。二人にしばらく待ってもらうように頼んで僕は公衆トイレに向かった。
だだっ広い多目的洋式トイレに座ると、僕は深呼吸してしてコンタクト・ドライブシステムにアクセスした。少し臭くてゴミだらけだが、集中する内に何も気にならなくなるだろう。
何重ものセキュリティを通過し、インディペンデンス号の火器管制システムにアクセスすると即座に主砲を選択した。レーザープラズマ加速型ビーム砲の一撃を食らわせてやるのだ。
インディペンデンス号の外部監視カメラにリンクすると、ケプラー22bの衛星軌道上に浮かぶ真っ黒で不気味なズヴェズダ号の艦影が有視界上に確認できた。やや旧式の形態で、白くはないがボウリングのピンのような形をしている。
1秒もかからず照準を合わせて各補正計算を済ませた。スペースデブリの発生を抑えるため、撃沈は避ける。レーザーガイドビーム砲をかすめて、爆発のショックで外宇宙に弾き飛ばしてやる!




