リブッサ
紅茶をポットに入れてテーブルまで運んできたマリオットちゃん。ピンク基調のシャツと短パン、黒ニーソックスの部屋着もいいんじゃない。初めてセンスのいい私服の姿を見たよ。ちょっと感動したついでに訊いてみる。
「お姉さんは……シュレムは休職中なのに家にいないの?」
「うん、オカダ君が訪ねてくると知ったとたん、ブリュッケちゃんと近所のスーパーに買い物に行ったよ。『男子禁制の女子寮にオカダ君が来るチャンスは最初で最後かもしれない』って。ちょっとしたパーティーになりそう」
「そんな気を遣ってくれなくてもいいのに」
ブルーの作業服姿の僕が申し訳なさそうに言うと、マリオットちゃんはニッコリした。
「オーミ姉妹社の研究所からスケさんとカクさんも文字通り、ここに駆けつけてくるって」
「おお! あいつらも元気にしているのか」
「スケさんは、やっと人間らしく歩くのが上手になってきたの。付近の住民から超可愛い女の子がいるって評判になっているみたい。でも相変わらず裸でいるのが好きみたいで、カクさんを困らせているらしいよ」
「ははは……100年もの間、ジャガーのアニマロイド、つまり裸で生活してきたから無理もないよ」
「久しぶりに全員集合って感じだね!」
「ああ、楽しみだ」
昨日散髪に行って正解だった。少し痩せたが日焼けして逞しくなったと自分では思う。いや思いたい。
「そういえば、アディーも心配して毎日顔を出してくれているの」
「そりゃよかった。あの姉さんなら心強いか……な?」
「非番の日は皆でご飯を食べる事にしていて、料理担当はもちろんこの私。その代わり掃除・洗濯はアディーが担当する事もあるのよ」
「金持ちじゃないと男奴隷は使役できないのか」
「そうね……アディーが洗濯した日は参っちゃう」
「ひょっとして洗濯物がボロボロになってしまうとか?」
「それもあるけど、私のショーツとブラを間違って大量に持って行ってしまうの」
「なんだそりゃ、自分の下着がどれか把握していないというのか……ありえない……ということは今、アディーはマリオットちゃんのパンツをはいているかもしれないという事?」
「ふふ、そうかもね。サイズが全然違うのに」
悪戯っぽく笑ったマリオットちゃんは、ぱっと花が咲いたように可憐で、文句なしに可愛かった。一方僕の頭の中では14歳の下着を付けたアディーの姿が妄想されていた事については秘密にしておこう。




