ヴァルプルガ
「ホント久しぶりだな、妹共々元気にしてるか? ブリュッケちゃんは?」
「ええ、でも今は――詳しく話している暇は……」
「情報統制下での不意打ちのガサ入れってところかな……一部の人間にしか伝えられていないということは」
「そうね、アディーが危険を承知で秘密裏に情報を提供してくれたの。でもさすがに私までが精一杯。盗聴のリスクを避けるには、直接あなた達に伝えに来るしか方法はなかったね」
「そうか、我々男達、B級奴隷のために、わざわざありがとう」
よく見るとシュレムの白衣は泥だらけだ。勤務時間の合間にここまで来る苦労は並ではなかったであろう。
「いや、男のためというか……オカダ君……君のために……」
急に彼女の声が小さくなった。
「ん? 何だって」
「馬鹿ね、ぐずぐずしていると警官隊に取り囲まれるよ!」
シュレムは僕の手からタオルを奪うと振り回し、我々の頬を叩いて喝を入れてきた。
「まぁー! 何て乱暴な看護師なの」
チトマスが僕をかばってシュレムの湿ったタオルを手で掴み取った。
「さっきから何なのよ、あなた! アディーから聞いているわよ。オトコ女のチトマス巡査ね」
「オトコ女って何よ! 誰の事? オカダさんから離れなさいって」
とうとうシュレムとチトマスは取っ組み合いを始めてしまった。いわゆるキャットファイトである。
シュレムの白衣のタイトスカートがギリギリまで捲れ上がり、白ニーハイストッキング上の絶対領域が全部見えてしまっているよ。しかもチトマスの浴衣の裾もはだけて、チラチラと見えるショーツの色柄がライトイエローだと分ってしまった。
「止めないか君達! オカダ君もじっくりと観賞していないで一緒に止めてくれ」
ゴールドマン教授の言葉に、はっと我に返った僕はレフェリーのように二人の間に割って入った。
「教授の言う通りだ。今はケンカしている場合じゃないだろ! みんなでここから脱出しないと厄介なことになるぜ……ぐべっ!」
勢いでモロ顔面に肘鉄を食らってしまった。すでに出そうになっていた鼻血が噴き出す。さすがに二人とも、争いを中断したようだ。




