イルゼ
「オカダさん、私です。チトマスですよ……」
「お……おう、さっきのチトマス君だね」
「ええ、そうです。ご一緒してよろしいですか?」
返事を待つこともなく建屋の方からチトマスが、ゆっくりと歩いてきた。湯けむりとライトの逆光のせいか表情がよく見えない。長めのオレンジ色のタオルを体に巻きつけている。これがケプラー22b流スタイルなのかな?
「恥ずかしいから、あまり見ないで下さい」
「何を気持ち悪い事を言ってるんだ。もっと男らしくしろよ」
「はい、初対面に近いので緊張しちゃいます」
チトマスはタオルを外し、流し湯をした後、温泉に足を入れた。希望通り視線を外してやっている内に、いつの間にかすぐそばまでやってきたではないか。
「いい湯だな……」
僕はチトマスの方を向いた。器用に湯船の中で体育座りしている彼は、のぼせたように顔が真っ赤だった。
「何から話せばいいのやら……気まずいですね」
「裸の付き合いだ。何でも話せよ」
「オカダさんが来る前までは、私が革命派のリーダー候補だったんですよ。ゴールドマン教授の教えを一身に受け、今まで精進してきました」
「俺より若そうなのに、しっかりしているな」
急に熱弁を奮い始めた彼は、自然とジェスチャーに力が入り中腰になってきた。
……ん? んん?
「わぁ! やっぱり恥ずかしいです」
チトマスは、すばやい動きで僕の背後に回り込み、両手で目隠しをしてきた。
「わわっ! よせ! よさんか!!」
僕がびっくりして後ろにのけ反ると、背中に心地よい柔らかな感触が二つ。しかも少しぬめりのある泉質のせいで、つるるっと下から上へ背中をなぞるように双丘を滑らせた。勢いで僕の右耳にその先端が触れる。
「あぁ!!」
チトマスは逃げるどころか僕の頭を抱きしめて胸を押しつけてきた。
胸だと? おっぱいだと? そういえば彼の体は妙に柔らかで、くびれた腰から下のラインは艶めかしい曲線を描いているではないか?!




