タリア
とうとう我々は、街の中心部と思われる駅前ロータリーまで来た。車から降りてギター・ライフルを片手に誰もいない駅前を調査してみる。
「オカダ君、残念ながら無人駅だぜ」
「ウソだろ、今にも電車が来そうなほど綺麗で立派じゃないか」
「入口はどこも完全に閉ざされているようね」
僕は電気の消えた暗い駅を目の当たりにしてがっかりした。改めて駅前のロータリーから街を見回すと、もはやオリジナル……日本の守山市の面影は薄らぎつつある。半世紀も経つと地球由来の資源は底をつき、独自の文化を築いていくのだろう。
ベージュやグレイのマンションがいくつか見えるがメンテナンスが行き届いておらず、あちこちガタが出てきており所々ケプラー風にリフォームされている。街の秩序を守るべき交番にも警察官の姿は見えず、沈黙したままだ。
よく観察するとアスファルトの道路はひび割れ波打ち、うっすらと砂がかぶさっている。自動車やバイクは廃れて使用されていないのかもしれない。
スーパーかコンビニのような廃墟もあったが店内に商品もなく、何か別の目的に使われているのか……それとも建て替え中なのかな。
……スケさんとカクさんがコラボして生きている人を捜索する。
「ねえ、ちょっと! これを見て!」
スケさんが駅併設女子トイレから白いパンツをくわえてきた。
「どれどれ? ちょっと貸してみな」
カクさんは、すばやくパンツを頭にかぶると、両耳を穴から出した。赤いステッチとリボンが付いたパンツはとてもキュートだ。
「ちょっと! 何するのよ!」
スケさんは憤慨した。
「うーむ、まだ女性の肌の温かみが残っているような……安心しな! オカダ君、どっかに人が必ず残っているぜ!」
「カクさん、名前が書いてあるぞ。なになに、ひ・ろ・み……」
「ヒロミちゃんかぁ~」
カクさんはパンツを伸ばすと、完全に顔を覆った。そして深呼吸をした後、胸一杯にパンツを通した空気を吸い込んだ。
「ヒ、ヒロミぃ~!」
「そういえば昔、近所にヒロミっていう汚いオッサンが住んでたな……」
「おっ!! オゲェ――――――――――!」
カクさんは、さっき食べたブイヤベースを被ったパンツの中に少し戻した。
「馬鹿ね! トイレに落ちていた得体のしれないモノなのに。汚くて臭いに決まってるじゃない!」
僕とスケさんの言葉に、ぐったりとしたカクさんは白目をむいて再起不能となった。




