アドラステア
教授から意外な言葉が発せられた。彼は僕と同じ目的を持つ同志じゃないか! この歳になるまで大人しく計画を練っていたのだろうか。僕がこの惑星にたどり着いたのは彼にとって、この上ない絶好のチャンスなのだろう。
ここからは全ての会話が筆談となった。A4の紙の上にペンを走らせる。
「数十年の間、総督の支配体制を倒すため、革命の同志を男女問わず集めている。無論そのための武器も用意している」
「なぜ今まで息をひそめ、大人しくしていた?」
「一度失敗して仲間が処刑された。反逆者と特殊技能や知識を持たない地球人は、利用価値ナシと判断され、私への見せしめとして処分されたのだ」
「俺のような地球人が後から来るのを、ずっと待ち続けていたのか」
「YES! 私が生きている内に間に合って本当に良かった」
老人の節くれ立った手は興奮のためか、細かく白蝋病のように震え、自らの文字を歪めるのだ。
僕は大事な事を思い出して大声を出してしまった。
「そうだ! 女子高生のスケさんとアニマロイドのカクさんはどうなったんだ? ゴールドマン教授、あなたが保護していると婦警から聞いたぜ? もう俺がB級奴隷になってから2週間以上も会ってないぞ!」
教授はペンをしまい紙をライターで燃やすと、その炎でクシャクシャの煙草に火を付けた。
「ははは、スケさんは可愛いね。君の事をずっと心配していたよ。最近やっと私にも心を開いてくれてね。ジャガーのアニマロイドボディの修理は、まだまだ時間がかかりそうだけど、もうずっと女子高生のままでいいんじゃないの?」
「可愛いって……あんたが作った人工的偽身体じゃないか!」
「そうだとも、私の初恋の女性をモデルにしたのさ。実を言うとバイオニクスを専攻したのも、これが夢だったりして」
「イイ年こいて何を言ってるんだ! そういえば教授、子供や孫が数えきれないほどいるらしいじゃないか。ひょっとして、とんでもない女たらし……?」
「いやぁ……最高の褒め言葉だな」
「勢い余って純情なスケさんにも手を出していないだろうな? 言っておくけど……彼女、教授よりかなり年上だぜ?!」
「おぉ! いいじゃないか! 16歳の外見で中身は包容力のある経験豊富な年上の姉さん……私の理想の女性そのもの。ロリータババアというニューカテゴリー、新ジャンル誕生の瞬間だな……しかもネコミミ! うわぁ! 考えれば考えるほど、とてもよいではないか! 人生の最後に何という最高傑作をこの世に生み出してしまったのだ……これは大ヒットの予感……嗚呼! 神よ! 私があと10年ほど若ければ……」
「あんた、さっきから一人で何を口走っているんだ!」




