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異世界ハーレム飛行~アマゾネスの星ってアリですか?~  作者: 印朱 凜
第2章 ファースト・コンタクト
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カリオペ

 高機動車を粛々と走らせて、防波堤を思わせる二番目のバリケードに向かった。

 ぐるりと囲む堀には浅く水がたまっていて環濠集落を思わせる。緊急時には飲み水になるはずだ。……よく見ると女物の靴が片方浮いていた。こいつは二重になったバリケードの内側にあたるのかな? きょろきょろしつつ、立派な幹線道路に続いている最も目立つゲートを通過した……。

 警戒しながら15分ほど流すと、いよいよ人が闊歩していそうな市街中心部に入った。


「ゲートに守衛らしき人もいなかったわね。途中の消防署も学校もグラウンドに至るまで、もぬけの殻」


「なになに……モリヤマ銀座だと……」


 商店街入口にそびえ立つ門には、確かにそう書いてあった。ホタル型にデザインされた街灯がオシャレ。しばらくは異様な無人世界に思わず息を呑んだ。

 異星なのに何だか懐かしいような、ひなびた田舎町の商店の数々。古い写真で見たこともある日本の風景そのものだ。いや、アレンジされているのか、微妙にセンスが違うか……。

 ゴミはほとんどなく雑草も生えていない。動いているものは我々以外に存在しなかった。綺麗なのはいいが、匂ってくるような人々の生活感がないのだ。


 シャッターが閉まった商店街を詳しく観察してみよう。明らかに人々が暮らしている痕跡はある。

 ……郵便局、洋服屋、居酒屋、ネイルサロン、クリーニング屋、焼肉屋、文房具店、果てはオモチャ屋まである! しかも全部日本語表記の看板である。だが営業している店舗はなく、全く誰にも出会わない……。


 嗚呼! 言葉の魔術師の力が欲しい。この街の風景や空気を、いかなる言葉を紡ぎ、的確に表現し、伝えられようものか。魔術師の言葉の力を借りるならば、世界一美しい廃墟、生ける屍のごとき街、簡潔にゾンビ街、市骸とでも言うべきか……。

 カクさんが短時間であるが、匂いを嗅ぎながら調査した。


「間違いなく生活している人はいるぜ! 朝方まではいたんじゃないのか……地下にでも潜ってんじゃないの」


「焼肉屋って……いったい何の肉を出しているのかしら?」


 提灯に興味を示したスケさんも調査に加わったが、何も見い出せなかった。

 オモチャ屋の前には、ゴム製のボールが風に吹かれてゆらゆらと転がっている。車から降りて、置き去りにされたキャラクター人形を拾い上げた。


「レディーDっていう名前なのか……」


 地球製のモノに比べ、明らかにクオリティが低い。金髪の奥に寂しげな微笑をたたえていた。ここには小さな子供もいたのだろうか。レディーDをベンチにちょこんと座らせると、僕は探索に戻ったのだ。

 

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