カロリーナ
僕はオーミモリヤマ警察署の地下に留置された。照明があまりに暗過ぎる。ナメクジが喜んで徘徊しそうなほど湿気が多く、何だか匂いも酷い留置所だ。
前にも病院の地下で同じような事があったっけ。この星に来てからは、本当にさんざんな目にばかり会っているよなぁ……もちろんいい出会いもあったけど。
何かが床でチョロチョロしている。地球から密かに宇宙船に潜り込んできたネズミが、ケプラー22bでも逞しく繁殖しているのだ。奴らが持つ生まれながらのバイタリティーには正直驚かされた。僕もしぶとく生きてがんばらねば!
それにしても全身を殴り蹴りされたので、あちこちが痛む。幸い骨にまでは異常ないようだが、重力の大きな惑星で暮らしている人々のパワーは強靭である。
サバクオニヤドカリ戦で負傷した左腕の傷がせっかく治りかけていたのに、また出血してしまった。もう傷を処置してくれるはずのシュレムはここにはいないな……。
無敵のコンタクト・ドライバーである僕も、コンタクト・ドライブシステムにアクセスするためのナノテク・コンタクトを両眼から失ってしまえば、ただの無力な地球人に過ぎない。カクさんと脳内通信する事もできないし、衛星軌道上のインディペンデンス号を始め、スタリオン高機動車や電神ヴィマナを遠隔操作することも不可能だ。
当然、国際連合宇宙局直属の太陽系外植民惑星一等査察官という肩書も、ここでは何の効力も発揮しない。何だそれは知らないな、の状態である。
全てを失ってしまった僕は今、正にB級奴隷と何ら変わりのない存在なのだった……ああ無情!
壁に背を付け、もたれかかっていたが、ふと顔を上げると婦警姿のアディーが檻の外に立っていた。
まさか、まさかの……アディー! 僕は感情が揺さぶられて腕が震えた。鉄格子を曲げんばかりに掴んで、通りもしない格子の隙間に顔を押し付ける。




