トゥースネルダ
「絶対に応じないもんね!」
僕はランドルトらに宣言した。パークスからの不当な要求には一切妥協せず、断固拒否してやる。
深呼吸した後、スケさんが急に立ち上がった。細長い脚が震えて、生まれたての子鹿のようでもある。
「私に任せておいて」
「おい、あまり無理すんなよ。まだ赤ん坊みたいな状態なんだから」
「よしよし大丈夫……体の慣らし運転よ」
スケさんは、とうとう二足歩行を諦めて床に両手をつくと、四つんばいになった。
「人間ってすごいわね、二本足で立って歩いたり走ったりできるなんて。本当に複雑で、すごい事を普通にこなしているんだから」
そう言いながら彼女はセーラー服のまま背を曲げて猫のように伸びをすると、大きな口を開けて欠伸した。そしてジャガーだったくせに女豹のポーズをする……オイオイ。
ランドルト姉のお下がりである制服のスカート丈は、マリオットちゃんがはいている物より数段短かった。つまり四つんばいになると、スカートの後ろから小さいサイズの白いショーツが丸見えになっているのだ!
絶妙な肉付きで、張りのあるカワイイお尻が四つ足で歩くたびにプリプリと弾んで、思わず見惚れてしまう。たとえそれが人工的偽身体の作り物でしかないと、頭では理解しているものの……そう、分かってはいるのだが、鼻血が噴き出す五秒前の状態になってしまった。気をそらすためカクさんの方を見る。
「姉御、パンツが丸出しになっていますよ……」
「……? そういえば、尻尾がなくなったわね」
スケさんは不思議そうな顔をして自分のお尻のワレメ辺りを撫でている。
カクさんとランドルト弟は、すでに左右の鼻穴から華厳の滝のように鼻血が盛大に噴き出していた。(そういうイメージ)
頭の中をおさらいしてみよう。スケさんは100歳越えのババァ、しかも元ジャガーの人外。だがしかし、何でだろう……まるで抵抗できない。この生々しさの前には理屈とか理性が全く通用しない状況である。男なら分かってくれるはずだ。
「スケさん、可愛い! 頭の上にネコミミが付いてるよ」
ブリュッケちゃんが指摘するようにスケさんの頭には黒い猫耳がピンと立っていた。これだ! 違和感の原因のひとつは……ランドルト姉が遊び心で付けた物なのかな?




