ラクリモサ
パークス商会の看板が掛かった営業所前まで来た。ロゴが今風にデザインされており、カラーリングも目を引くように考慮されている。事務所は立派な小ざっぱりとしたビルの二階だ。一階は駐車スペースとなっているので、遠慮なくスタリオン高機動車を停めさせてもらう。ルーフが軒裏ギリギリで危うく擦れそうになった。
多分奥に見える倉庫スペースにカクさんは監禁されているのだろう。パークスめ! 一度欲しいと思ったものは、手段を選ばず手に入れようとするのか。有無を言わせず、どんな汚い手を使ってでも奪い取る、その底知れぬ貪欲さ……自分に正直な所は逞しく開拓移民としては正解だが、俺は気に入らないな!
ショットガンのフォアエンドをスライドさせて初弾を装填すると、僕は倉庫のドアノブに向かって射撃してロックごと吹き飛ばした。どんな施錠もこじ開ける、正にマスター・キーを所持している気分だ。
次弾をガシャリと薬室に送り込むと、白煙たなびくショットシェルが床に転がった。同時に警報装置が作動して盛大にサイレンが鳴り響き、赤い回転塔が灯台みたいに緊急事態を派手に演出する。
フラッシュライトを付けて倉庫に入ると、そこは腐った銀杏の実をトッピングした夏場のヘドロに男子トイレの臭いをミックスしたような空気がよどんでいた。正面を見ると、いかにも頑丈そうな太さの鉄格子でできた錆色の檻がある。
「カクさん、待たせたな! 助けに来たぜ! 檻の端っこにうずくまれ!」
「今、自分に……ケツに刺激を与えると、非常にまずい……」
「もう遅いわ! 耳を塞いでろ!」
12番ゲージの00バックをショットガンから爆射して、手の平大の南京錠を粉々に破壊した。
「……OH~!」
カクさんは、ぶるんとして妙な嬌声を上げると、檻の蓋を開けるやいなや、倉庫のドアを蹴破らんばかりの勢いで外に飛び出していった。堀に向かって尻尾を上げている……ギリギリ間に合ったのかな?
まだ熱いショットシェルの撃ち空を排莢しながら倉庫から出て、フロントのひしゃげたスタリオン高機動車に乗り込もうとした時、息を切らしたパンツスーツ姿の小柄な女性にばったりと出くわした。




